「僕がヘアショーでコロナ禍の経験を語った理由」 SHACHUみやちのりよしさんインタビュー

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「僕がヘアショーでコロナ禍の経験を語った理由」 SHACHUみやちのりよしさんインタビュー

デザインカラーの第一人者、みやちのりよしさん。美容師として、経営者として大切にしていることは?

デザインカラーの第一人者として知られる、みやちのりよしさん(SHACHU代表)。

2023年10月17日、日本武道館で行われた「ナプラ ドリームプラス」で、みやちさんが繰り広げたヘアショーが大きな反響を呼んでいます。

みやちさんにヘアショーのこと、美容師として、経営者として大切にしていることをうかがいました。

①武道館のヘアショーで語ったコロナ禍の経験

── 先日行われた「ナプラ ドリームプラス」でのみやちさんのヘアショーを拝見して、とても感動しました。ステージでヘアカットをしながら、コロナ禍での辛かった経験を赤裸々に語り、それでも美容師の仕事はカッコいいと熱くうたい上げるものでしたが、どのようなことを考えて臨まれたのでしょう?

個人的なテーマがひとつだけあったんです。広い武道館の3階席の隅っこにいる方、その方の心に一番届くようなことをしたいと思った。だからすごくシンプルなセットとライティングにして本音を話して僕のそのままを伝えることにしたんです。死ぬほど緊張しましたが(笑)。

僕がコロナ禍でもがいていた時期があったので、そのことを語りかけるのが一番伝わると思いました。ノンフィクションでやりたかったので、セリフを決めていたわけでもなく、途中からはアドリブです。

DREAM PLUS CONTEST(ドリームプラスコンテスト)2023で技術と想いを披露するSHACHU(シャチュー)みやちのりよしさん
「ノンフィクションでやりたい」とセリフを決めずにステージに立った

── コロナ禍の最中、みやちさんが代表を務める「SHACHU」は2カ月お休みされました。売り上げが1円もない中、相当のプレッシャーというかストレスだったと思いますが。

「終わったかな」とちょっと思いました。休業するのはいいんです。人に会わなければ感染リスクがゼロになりますから。スタッフもそのほうが安心できるし、入ったばかりの新入社員も守らなければいけませんでしたから。

内部留保もあったし、運転資金も借りやすかったから、いったん店を閉めることに関してはそれほどネガティブな気持ちはありませんでした。アメリカのコロナ対策がシビアだという話は聞いていたし、「そうするしかないな」と思ったので。

自宅待機の間、お客さまを喜ばせる技術は磨かなきゃいけないよ、と支援物資みたいな感じで、お店からカラー剤やウィッグをスタッフ全員に送っていました。それを知ったメーカーさんがカラー剤を送ってくれたりして「最高!」って感じでしたね(笑)。

おかしくなってきたのは1カ月ぐらい経ってからでした。たまに1人でお店に来て掃除をしていると、涙が出てきちゃうんです。そのときにチャイムが鳴って「お客さんが来た!」と思って「いらっしゃいませ……」と言いかけたら宅配便だったこともありました。

SHACHUみやちのりよし代表インタビューで話しているみやち代表
スタッフを守るため、コロナ禍に2カ月休業したそう

②自分の心が栄養満点なら他人の悪口なんて言わない

── 武道館のステージでお話されていたエピソードですね。2カ月の間、スタッフに給与は支払っていたのでしょうか?

そうですね。アシスタントはフルの給料、スタイリストは前年度の平均の売り上げの歩合を乗せて支払っていました。さらに家族を扶養しているスタッフにはボーナスという形で10万ほど上乗せしました。

── それはすごい。破格の待遇ですね。

そのときは3店舗目を出すための資金を用意していたので、それを使ってもいいや、と。スタッフを困らせたくないですからね。休業するときに給料のことを聞かれたら「変わらないよ」と答えたかったんです。

本当にキツかったのは、それでもスタッフが次々と辞めていったことでした。

ただ、そこでひねくれてしまって、誰も信じられないような人間にならなかったのは、僕のツキです。どっちかというと、去っていった数より助けられた数のほうが多かったので。

それはコロナで一番勉強したことかもしれない。「悲しい、悲しい」と言っていても何も始まらないんですよね。応援してくれる人も助けてくれる人もいるんだから、それに応えるしかない。

それに、僕がうまくいってなかったら辞めた奴のことを悪く言うかもしれなかったけど、うまくいっているから悪く言わなくてもいいじゃないですか。辞めた子たちも幸せになってほしいって本当に思ってるからこそ、武道館のステージで話さなきゃって。

今は結果も出ていますし、武道館にも立てましたし、フランチャイズもやっていますから。自分の心が栄養満点なら、他人の悪口なんて言わないと思うんですよね。

SHACHUみやちのりよし代表インタビューで話しているみやち代表
「去っていった数より助けられた数のほうが多かった」

③残ったみんなを信じ続けてよかった

── フランチャイズとはAB&Companyと事業提携している「CS made by SHACHU」のことですね。今は何店舗になったのでしょう?

だいたい20店舗ですね。ありがたいことに、みやちという人間の考えに触れたいという人がそれだけいたからスタッフが一気に集まったんだと思います。AB&Companyの鈴木のり彦さんが速度をつけてくれました。

── 2カ月も休業していたら、若いお客さまは他のサロンに流れてしまいませんでしたか?

めっちゃ失客しましたよ。休業が1カ月なら良かったと思いましたし、後悔もしました。

キツかったのはスタッフが辞めていったこと。休業したことについて同業者からクレームが来たのもキツかったかな。ただ、僕が取れる手段は休業しかなかったので、謝りに行きましたよ。クレームを入れるお気持ちも分かりますし、それ以上にこんなことで揉めるのが嫌でした。

後悔しても仕方ないから、お客さまを増やしていくことしか考えませんでしたが、やっぱりキツかったですね。

── 2店舗あったのを1店舗に縮小したのはコスト面を考えてのことですか?

スタッフもけっこう辞めてしまったので、2店舗で営業する必要がなかったのは確かですが、1店舗にしたといってもフロア数は増えているんですよ。ちょうど同じビルのフロアが空いたので1カ所に集約しました。そして残ったスタッフのメンタルケアが大事だと思ったので。理由としてはこれが大きいですね。

コロナ禍の前にいたスタイリストは、今となっては「SHACHU」を一緒に始めた相棒のMORIYOSHIしか残っていません。でもコロナ禍、コロナ前ではアシスタントだった子たちが今はスタイリストになって大活躍してくれています。みんなのおかげで売り上げや技術のクオリティー、ブランディングも安定しました。これは本当にうれしいことです。残ったみんなをずっと信じ続けて良かったと思いました。

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