初の創業家以外からの社長就任 リアル化学・梢倫明社長「一人ひとりが活躍する100年企業へ」

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初の創業家以外からの社長就任 リアル化学・梢倫明社長「一人ひとりが活躍する100年企業へ」

今年1月よりリアル化学の社長を務める

1945年(昭和20年)の創業以来、理美容室向けにパーマ液やヘアカラー剤の製造・販売を続けているリアル化学。「人に美しく、地球を美しく」を企業理念として掲げ、髪に負担をかけないシステインパーマ液の開発などを業界に先駆けて行ってきた。

2024年1月に梢倫明氏が代表取締役に就任して新体制が発足。初の創業家以外からの代表就任となった梢社長に、就任の経緯や現在進めているプロジェクト、来年12月に創業80周年を迎えるリアル化学の企業ビジョンを聞いた。

①食品メーカーの営業から化粧品会社の社長へ

前職の食品メーカーでは長年営業職を務め、広域営業部長の重責を担っていた梢社長。もともと「人の健康に役立つ製品を作りたい」と考えていた。転機が訪れたのは、消費者向けのアミノ酸を使った小売業PB化粧品の製造・販売を行ったときだった。

「化粧品の開発で連携した社内のアミノ酸部責任者からある時、岩崎彰宏社長(当時。現・会長)を紹介され、研究熱心さ、人柄の素晴らしさ、品格の高さに感銘を受けました。そこから縁がつながって現在に至っています。私は食品の営業でしたから、今思えば不思議な縁ですね」

リアル化学の「人を美しく、地球を美しく」という企業理念にも強く共感したという。

「人を美しくすることは、心の健康に貢献できるのではと考えました。今はメンタル系の病気も多く、身体が健康なだけでは健全な生活は送れません。この会社なら心の健康に貢献できる仕事ができると思い、リアル化学に大きな魅力を感じました」

リアル化学の新社長に就任した梢倫明氏へのインタビュー
学生の頃から健康に関する仕事を志していたという梢社長

2019年に専務として入社、各部門を担務した後、2024年1月1日付で社長に就任した。創業家以外からの初の社長就任となる。

②就任後に掲げた二つのテーマ

梢社長は専務就任以来、自社製造について二つのテーマを掲げてきた。「製品の定期的な改廃」と「内外製の比率の是正」だ。

リアル化学は創業以来、自社工場での生産にこだわり、赤羽、東池袋を経て1982年(昭和57年)から川越工場で製品を作ってきた。

「入社したとき、内外製の比率を見たら、外製比率が高まっていました。たとえば、エアゾール製品などは自社では製造できません。OEMの委託工場さまには大変お世話になっていますし、技術的なご指導もいただいておりますので、ご縁は今後も大切にしていきます。しかしながら自社工場を備えるメーカーとして内製比率が低くてはいけないと考え、役員とマーケティング部で『製品中期計画』を選定し、全社の頑張りで3年間で内製を大きく高め、内外比を逆転させることができました」

もう一つのテーマである「製品の定期的な改廃」は、前職での経験に基づいている。

「製品は必ず適切な期間で改定していかないと、その時々のニーズを汲み取れません。製品の定期的な改廃はメーカーの使命だと考えています。リアル化学では自然を大切にするというテーマを持ち、技術的、科学的にこだわった製品を作ってきましたが、これまで製品の改廃にあまり積極的ではありませんでした。先ほどお話した『製品中期計画』で内製化と同時に主力ブランドの改定や廃止商品を決めて実行しました」

リアル化学の新社長に就任した梢倫明氏へのインタビュー
左から、トリートメントやプレックス剤をそろえる「メイリー クロス」、ヘアカラー剤の「メイリー クロス」と「メイリー セゼ クロス」、パーマ剤の「ルシケア アクア」。主力ブランドから見直しを進めている

直近の5年間でリアル化学の主力製品である「MEiRY X(メイリー クロス)」をはじめとするカラー剤、「LUCICARE AQUA(ルシケア アクア)」をはじめとするパーマ剤の品質とデザインを一新。ブランドに新しい付加価値をつけるリニューアルを行った。

カラー剤やパーマ剤とともに使用するプレックス製品を新発売し、それぞれのブランド価値を強化する製品展開も行っている。今後も他の主力ブランドと同様に製品の改廃を進めていくという。

リアル化学の新社長に就任した梢倫明氏へのインタビュー
リアル化学に入社後はほとんどの部門を担務したという梢社長

③企業の特色は「研究開発」と「安心安全」

リアル化学といえば、こだわり抜いたカラー剤とパーマ剤の製品・開発が特徴。そのルーツは戦後すぐの頃にさかのぼる。初代社長の岩崎清氏が東京・赤羽でリアル化学を創業したのは1945年12月のこと。

「創業者の岩崎清は、パーマ液の原料をわざわざ川崎の工場まで自転車で取りに行っていたそうです。その道すがら、美しいパーマスタイルの女性を見ると『それはどこのサロンでかけたのですか?』と聞き、そのサロンに飛び込んでテクニックやどんな商品を使っているのかを尋ねて、製品開発につなげていきました。市場調査を行い、人にものを聞き、研究をして製品開発を行う。それがリアル化学の創業の心です。その精神は今も受け継がれています」

リアル化学の新社長に就任した梢倫明氏へのインタビュー
本社のエントランスには「自転車」と題して、創業の心のエピソードが刻まれている

リアル化学の製品開発の大きなテーマは「消費者と施術する理美容師さまの安全安心」。そこで重要な役割を果たすのがアミノ酸だ。毛髪をはじめ、人間の身体はアミノ酸でできている。アミノ酸を活用することで、髪や肌への負担を最小限に抑えつつ、美容効果を高められるというわけだ。

2代目の岩崎彰宏社長が注目したのが、アミノ酸の一種のシステインという成分だった。システインをベースとしたパーマ液を作れないかと日夜、研究開発に取り組み、ついに製品化に成功する。

「1975年にアミノ酸を原料にしたシステインパーマ剤『シスベール』を業界に先駆けて、開発・発売しました。髪への負担が少ないだけでなく、施術をされる理美容師さまの手肌にも優しいというのがポイントです。その後、髪に負担が大きいアルカリ剤が中心だった染毛剤の開発にも取り組み、1989年には髪への負担が少なく自然な髪色を作る酸性酸化染毛剤『CARE TONE(ケアトーン)』を生み出しました。これは今でも売れている商品です」

リアル化学の新社長に就任した梢倫明氏へのインタビュー
1975年に発売されたシステインパーマ剤「シスベール」㊧と今日でも堅調に売れているロングセラーの「ケアトーン」㊨

2001年には、日本古来の草木による染色の知恵をヘアカラーに応用した「ボタニカルカラー」を発売。「自然との融合」という新たなコンセプトを取り入れた最初の商品である。これも2代目社長の岩崎氏のこだわりによって生み出されたものだ。2016年には、敏感肌を対象としたパッチテスト済みで髪と同時に肌も健やかに保つスタイリング剤「NOTIO(ノティオ)」を発売し、ヒットを記録した。

人の髪と肌の安全と安心に真摯に向き合い、研究開発に全力を尽くす。こうした姿勢が、リアル化学の最大の特色だ。

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