
美容室経営や美容師のキャリアについて語る笠本善之さん
自信を持ってお客さまに接し、「高くてもあなたにお願いしたい」と指名されるには、技術は当然として、さらに美的センスや接客スキルも磨く必要がある。でも、どうやって磨けばいいのか。銀座で高単価サロンを営む笠本善之(かさもと よしゆき)さんに、どんな風に自分を磨いてきたのかうかがった。
磨くのは、思いつく限りの「全部」
笠本さんが磨いてきたのは「全部」だという。
「全部」というと元も子もないんですが、映画やドラマを見るのも勉強です。映画もドラマも「作り物」じゃないですか。でも、みんなそれに没頭して涙し、感動する。ということは、そのセリフの言い回しとか、ちょっとしたところに、人の心を動かすヒントがあるんです。
サービスの所作は、飲食店に学びました。頑張ってちょっと高い店にいく。そこで「美味しいな」って思うだけじゃなくて、器やインテリア、スタッフの言葉づかい、所作をじっくり観察します。「あそこで目配せしたよね、何だろう」とか、そういった五感を研ぎ澄ましていろんなことを体験する。
よくないことも当然体験しますよね。入ったお店が良くなかったら「何が良くなかっただろう、あそこの掃除が行き届いてなかったからか、入ったときの瞬間の匂いが良くなかったのか……」そういったことを、帰り道でなんどもくり返し考えています。あれです、牛が胃に入れた食べ物をもう一回よく噛んで消化する反芻(はんすう)みたいに。
なぜ自分はそう感じるのか、その原因をつきつめて考える、と同時に、客観的な視点も大切だという。
あとは、動画を撮りました。人に「どうでしたか」聞いても「よかったよ」しか返ってこないじゃないですか。喋り方とか声質とか、自分自身を客観的に見ないと気づけないことがあります。
自分に自信が持てたのは40代後半から

さまざまな角度から自分自身を磨いてきた笠本さんだが、かつては不安ばかりだったという。
40前半まで、常に不安があった。口では「大丈夫、全然全然問題ない」って言ってて、実際ちゃんとできていたんだけど、「これでいいかな」と、ものすごく不安だった。
自信が持てるようになったのは40代後半以降だ。
40代後半以降は、仕事に関しては不安がなくなって「大丈夫!」と思えるようになった。それからの方が楽しいですね。脳のパフォーマンスに余力ができるんで、技術に関してはオートマチックに動くんですよ。どうでもいい話していても黙っていても、やることはきちんとやる、仕上がりは一緒、というぐらいに自分を操縦できるようになりましたね。
自信は、たゆまず自分を磨き続けた先に、あとからついてくるものなのかもしれない。
取材/大徳明子 文/曽田照子 撮影/上米良未来
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