
美容サロンにおける「店販(店頭販売)」は、単に客単価の向上につながるだけでなく、お客さまとの関係性を深める重要な接点にもなりえます。
今回はホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン店販調査」(2025年)から、お客さまが店販商品に抱く期待などのインサイトを深掘りし、店販がサロン経営にどのような良い影響をもたらすかについて考えていきましょう。
文・作表 江頭茉里(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
目次
①どのくらいのお客さまが店販を利用している?

詳細な分析に入る前に、まずはどのくらいのお客さまが店販を利用しているのか、規模を確認しましょう。
サロンによって異なりますが、理容室以外のほとんどのサロンで、店販を利用したことのある比率は3割を超えています。
最も利用率が高いのはネイルサロンで、「ここ1年間で購入した」と「(ここ1年間の購入はないが)過去に購入したことがある」をあわせると、55.7%と半数以上の人に利用歴があることがわかります。
お客さまの多くが店販も利用するということは、施術と同様に店販に関する対応にも力を入れる必要があると言えそうです。
②購入を決定するタイミングはいつ?要因は何?

続いて、お客さまが実際に店販商品を「購入しよう」と思うタイミングについて調べました。一体、サロン通いのどの時点でその商品を買うことを決めるのでしょうか。
調査によると、「来店前」の段階ですでに購入を決めているお客さまが多いことがわかりました。特に美容室では51.3%と、半数以上の人が「来店前」と答えています。
この「来店前」には「サロン来店前(以前から購入しようと思っていた)」と「サロン来店前に、検索予約サイト(ホットペッパービューティーなど)で商品情報を見て」という選択肢が含まれますが、特に前者の「サロン来店前(以前から購入しようと思っていた)」に購入を決めた人が最も多く存在しました。
つまり、店販商品の購入率を高めるための勝負は、お客さまが実際にサロンにいらっしゃる前から始まっているということです。
最近は、インターネットを通じてサロン専売品に関する情報も手に入れやすい時代になり、事前に調べてから来店するお客さまが増えていると考えられます。
店販に関する情報発信を積極的に行っておき、「この商品が欲しい」と思っていただくと、来店自体をうながすきっかけにもなりそうです。

とはいえ、購入意思は来店前だけですべてが決まるわけではありません。
ネイルサロンでは「施術中」にスタッフとの会話を通じて購入を決める人が多い傾向にありました。ネイルのプロであり、専門的な知識を持つスタッフから商品に関する説明を受けたり、おすすめされたりすると自然と「買いたい」という気持ちが高まります。
あるいは、施術中に実際に使ってみることで効果が実感でき、納得して購入につながったという経験がある方も多いのではないでしょうか。
実際にお客さまと対面し、話をしたり、お試しをしていただいたりするという「体験」こそが店販における大切な一要素だと考えられます。
③サロンのリピート促進にも好影響

店販商品を購入すると、その後の商品やサロン自体に対するお客さまの意識に何らかのポジティブな変化が見られることもこの調査から明らかになっています。
店販購入後の意識変化について問う質問では、美容室では「品質が良く、購入してよかったと思う」がトップの回答となりました。これは理容室、ネイルサロンでも同様の結果です。
次いで「また同じ商品を、このサロンで購入したいと思う」があげられており、すべてのサロンジャンルで3〜4割のお客さまが同様に回答しています。
リピートして購入したいということはつまり、そのサロン自体にもう一度訪れたいという意思があることがわかります。
さらに、「スタッフ・サロンへの信頼感が増したと思う」「スタッフは自分のことを理解してくれていると思う」など、スタッフとの関係性が良くなったことに言及する回答も多く見られました。
店販商品をうまくおすすめしてご購入いただくことは、お客さまとサロンの信頼関係を強化することでもあり、実はサロン自体のリピート来店にもつながる大切な鍵だと言えそうです。
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