【徹底分析/ビューティガレージ 2021年決算】 最高益更新、中期計画の目標引き上げ

経営・業界動向
【徹底分析/ビューティガレージ 2021年決算】 最高益更新、中期計画の目標引き上げ

リーディングカンパニーの業績を深掘りする、加藤千明さんの「決算 徹底分析」。第5回は、ビューティガレージの2021年4月期通期決算に迫ります。

文・作表 加藤千明 ※図は決算資料より引用

東洋経済新報社で2誌の編集長を歴任した後、ファイナンシャルプランナー兼ライターとして独立。美容業界のリーディングカンパニーを解析する「決算 徹底分析」シリーズを連載中。

停滞する市場で継続成長

少子高齢化による人口減少の影響もあり、近年の理美容市場は市場規模が頭打ちとなっています。

ここに新型コロナが追い打ちとなり、2020年度はとくに大きく減少しました。

理美容市場規模推移・予測

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こうした厳しい理美容業界にあって、ビューティガレージは売り上げ、利益ともに拡大を続けています。

中古買取から始まったルールブレイカー

今でこそ、中古品・アウトレット品の売上高は物販事業全体のわずか1%にすぎませんが、ビューティガレージは、2003年に現代表の野村秀輝、供田修一の両氏が「インターネットによる中古理美容機器販売・買取事業」をベンチャーフェアに出展したところからスタートした会社です。

この当時、多くのビジネスの世界でインターネットが広く活用されるようになっていました。

「既得権益を守る力が強く、インターネットでの卸販売や中古商品の流通が一切認められていない市場」だった当時の美容業界、ここにネットの世界を持ち込み、風穴を開けたことで、ルールブレイカーとして歩んでいくこととなります。

会社のホームページに掲載されている「沿革」によると、スタート直後から各地にショールームをオープンし、約3年で全国展開をほぼ完成させています。

2021年4月期の連結決算概要

ビューティガレージは6月11日、2021年4月期の決算を発表しました。

連結決算

■売上高
195億9706万円(前年比24.6%増)

■営業利益
10億121万円(同37.1%増)

■経常利益
10億8048万円(同44.6%増)

■親会社株主に帰属する当期純利益
6億5450万円(同60.4%増)

売上高は、データが確認できる2012年4月期以降、これで10年連続の増収となり、過去最高を更新しました。

また、利益は2年前の2019年4月期にいったん減少しましたが、再び回復しています。

ビューティガレージ決算 売上高と利益の推移

本業のもうけを示す営業利益は、前年比37.0%増えました。

2020年度は、まつげエクステンションの商材を販売する松風やまつ毛エクステンション研究所(21年4月に合併、現・日本アイラッシュ総研)、中堅美容ディーラーの和楽など5社を傘下に収めました。

また、渋谷に新規ストア、兵庫県に物流センターを開設しました。

こうした事業の拡大にともなって、コストも増えています。

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ただ、売上高も大きく増えたため、こうしたコストの増加を吸収したうえで、なお大幅な増益となっています。

営業外収益では、保険の解約益を約5000万円計上しました。

それ以外は特別大きな収益や支出はなく、好調な本業の業績をそのまま反映し、親会社株主に帰属する当期純利益も過去最高を更新しました。

少し詳しく見てみましょう。

セグメント業績

ビューティガレージの事業は、以下の3つのセグメントに分けられています。

①物販事業
②店舗設計事業
③その他周辺ソリューション事業

各セグメントの売上高は順調に増えてきました。

EC伸びた物販事業

主力事業でもあり、売上高が最も大きいセグメントが物販事業です。

物販事業

■売上高
155億9164万円(前年比30.0%増)
うちEC:121億9400万円(同33.1%増)

■セグメント利益
7億8080万円(同27.6%増)

物販事業は、インターネット通販サイト「BEAUTY GARAGE Online Shop」を中心に、カタログ通販誌「BG STYLE」、全国のショールームなどを通じて、理美容機器、化粧品などの商材を販売する事業です。

このうちパソコンサイトとモバイルサイトによるEコマース売上高が全体の78%を占めています。特に、モバイルサイトを通じた売り上げが急拡大しています。

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アクティブユーザー数が増加

登録会員数は、ここまで順調に増加を続けてきました。2020年度末(2021年4月末)現在の会員数は48万7762口座となっています。

このうち、1年間に1回以上購入したことのあるアクティブユーザーは13万1331口座で、特に20年度は前年末19.6%増と大きく増加しました。

ビューティガレージ決算 登録会員口座数の推移

また、このうち1年間に6回以上購入したことがあるロイヤルユーザーは4万4622口座で、前年比30.0%増とさらに増加率が高い点も注目です。

新型コロナの影響でECへのシフトが一段と進んだ結果、新規会員数、リピーターともに増えるといういい形になっています。

店舗設計事業

店舗設計事業は、連結子会社のタフデザインプロダクトが手がけています。

美容系サロンや飲食店など、様々な店舗設計を手掛けるタフデザインプロダクト

タフデザインプロダクトは、ビューティガレージ創業の翌年にグループ入りしています。

店舗設計事業

■売上高
33億9170万円(前年比4.5%増)

■セグメント利益
2億1360万円(同12.0%増)

年度の前半は、新型コロナの影響で、美容サロンの新規出店の延期や中止が相次いだようです。しかし、後半には大型案件の受注などで巻き返し、売上高、利益ともに前年度比プラスを確保しました。

その他周辺ソリューション事業

その他周辺ソリューション事業には、サロンの開業支援・経営サポート、資金調達・支援、物件仲介、M&A仲介、店舗や設備のリース、決済支援など、さまざまなソリューションが含まれます。

その他周辺ソリューション事業

■売上高
6億1370万円(前年比24.8%増)

■セグメント利益
8170万円(同79.3%増)

2020年度は、店舗リース、居抜き物件仲介、決済支援事業が好調だったことから、売り上げ、利益ともに大きく増加しました。

中期経営計画の目標を修正

ビューティガレージは、昨年の6月に2024年度までの5年間を期間とする中期経営計画を発表しました。

ビューティガレージは、2019年度実績において、国内美容ディーラーとしては4位。

この中期経営計画では、2024年度までに「国内美容ディーラーTOPの地位を獲得する」ことを目指し、成長を加速させ、飛躍させるとのシナリオを描いていました。

そして、6つの基本方針を定めています。

2020年度は、その初年度として、

アジュバンコスメジャパンと正規販売代理店契約を締結(方針1)

兵庫県尼崎市に物流センターを開設(方針2)

美容サロン事業者に特化したクレジットカード「サロンプロフェッショナルカード」を発行(方針5)

台中(台湾)にショールーム兼物流センター開設(方針6)

などを実行しています。

他の多くの業態でも見られるように、2020年は新型コロナの影響でネットへのシフト、デリバリーへのシフトが進みました。

こうした変化も追い風となり、会員数の増加、業績の拡大につながっています。

売上高、経常利益ともに20年度の実績は、すでに当初の21年度計画を上回りました。

ビューティガレージ決算 中期経営計画

また、2024年度のアクティブユーザー数の目標も、18万口座から20万口座へと引き上げています。

2021年度の見通しと、今後の課題

2021年度(2022年4月期)の業績見通しについては、次のように発表しました。

連結決算

■売上高
230億6100万円(前年比17.7%増)

■営業利益
13億100万円(同30.0%増)

■経常利益
13億400万円(同20.8%増)

■親会社株主に帰属する当期純利益
7億9500万円(同21.6%増)

美容ディーラーは、それぞれの地域ごとに中小事業者がいますが、そういうなかで、上位企業は買収を繰り返しながら事業を全国に拡大しています。

冒頭に紹介した調査にもあるように、美容業界は市場全体が拡大するという状況ではなく、限られたパイを取り合うという、厳しい世界です。

こうしたなかで、ビューティガレージはアジアへ拡大するという方針を打ち出しています。

中期経営計画では、海外事業の早期収益化が方針のひとつに掲げており、国内でナンバーワンとなった先には、アジアでナンバーワンを目指す考えです。

実際、すでに台湾、中国、シンガポール、マレーシアに拠点を設けています。

2019年5月にオープンした台湾のショールーム。翌年には3拠点に拡大

これは、同業他社には見られない最大の特徴といえるかもしれません。

もちろん、当面は、ECの機能向上や各種サービス拡充によって顧客の利便性を高め、取り扱いシェアの拡大を図るといった、国内での事業強化が主軸となるでしょう。

あわせて、アジア展開をどう進めていくのか。

アジア市場は、人口規模で日本をはるかに上回っており、大きな市場であることは間違いありません。

それだけに、ライバルに差をつけるような大きな成功を得られる可能性がある一方で、うまくいかなかった場合には足を引っ張る存在になってしまう可能性もあります。

「ルールブレイカー」として、ここまで成長してきたビューティガレージ。次なるステージをどう切り開いていくのかが注目されます。

加藤千明(かとう ちあき)
筑波大学を卒業後、山一証券に勤務。1993年7月、東洋経済新報社に入社。電機・化学業界担当記者としてITバブルの全盛期と終焉を経験。2005年より『東洋経済 統計月報』編集長、2010年より『都市データパック』編集長を歴任。『CSR企業総覧』『米国会社四季報』編集部を経て、2021年2月に27年勤めた東洋経済新報社を退社。現在はデータに基づいた分析を強みに『アメリカ企業リサーチラボ』を運営しながら、ファイナンシャルプランナーとしても活動。

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