ジャカルタで美容室2店舗を経営。坂手遼治、オンリーワンの生き方

特集・インタビュー

⑥ジャカルタの美容室経営事情

── ジャカルタでサロンを経営する上で大変なことはありますか?

主張するのが当たり前という社会なので、スタッフがとにかく何でも交渉してきますね。意見を戦わせる時、ロンドンやニューヨークなら論破できるのですが、ジャカルタだと合理性よりも感情の方が強いのでムリ。妥協点を探るしかないです。

それぞれの国で得たものを挙げるなら、ロンドンは英語力でした。ニューヨークは多様性ですね、幅が広がりました。そしてジャカルタは忍耐力とサバイバル力。いい意味であきらめがよくなりました。受け入れる力というのかな、許容力が増えたと思います。

海外で活躍する美容師インタビュー・坂手遼治
「ロンドンで英語力、ニューヨークで多様性、ジャカルタでは忍耐力とサバイバル力を得ました」

── スタッフの採用や教育については。

インドネシアには美容師の資格がなく美容専門学校もないので、アシスタントは経験ゼロで入ってきます。採用に苦労するというより定着しないのが問題ですね。採用したけれど初日から来なかったとか1週間でいなくなったとかはざらです。

なので、アシスタントの面接をやめました。何も知らない、何もできない状態で入ってくるので、技術をテストすることもありませんしね。希望者はとりあえず1日だけ体験入店してもらい、人柄に問題がなければ即採用です。

スタイリストへのカリキュラムとしては、週に3回練習して2年くらいでデビューです。定着してから辞めたのは、独立したオープニングスタッフの1人だけですね。

── 美容師の給与水準は、他の職業と比べてどうなのでしょう?

高くはないですね。アシスタントは最低賃金でのスタートです。ただ給与と別にチップを受け取っていますし、スタイリストになれば歩合制なので、頑張り次第では大卒の給料を軽く越えます。

うちの店では、20代半ばの女性がシニアスタイリストになり、最年長のスタッフの3倍稼いでいます。彼女は、目標設定を次々超えてくるので、そのたび給与を上げています。出来る人はむくわれるという成果報酬型です。いいロールモデルになっています。

⑦海外に挑戦するということ

ジャカルタで活躍する美容師・坂手遼治さん
「一歩外に出てみることで見える景色がある」

── 日本とは異なる事情がとても興味深いです。

日本では美容室の競合が多いので経営が厳しかったり、スタッフの採用に苦労したりしていますよね。ジャカルタでは日本のようにいかないこともありますが、そういう難しさはない。

海外に行くのはハードルが高いと思われがちですが、ハードルなんて海外でなくてもどこにでもあるものです。海外だから大変ということは思うほどないですよ。

── 海外に行く美容師さんはいますが、さまざまな国を渡り歩く人はなかなかいません。

僕は勉強もスポーツもそれなりに出来たけど一番にはなれなかった。そういう器用貧乏なところがコンプレックスでした。30歳を過ぎて「一番は狙えない。でも他にない経験をしてきた人になろう」と頭を切り替えたんです。

ヨーロッパ、アメリカ、日本、インドネシアで働いてきた美容師は世界で一人です。これは自分のブランディングになっています。

英語を話せることは力になりましたが、それだけなら他にもいます。もうひとつ、アジアを知っているということが加われば、それは自分だけの価値。地味なオンリーワンですが、本当にオンリーワンです。

成長するアジアで美容室を経営するというのは日本からだと現実感がないのもあって、この価値がなかなか伝わらないんですけどね(笑)

── ASEANの主要国であり、人口が世界4位でなおも増え続け、経済成長が続くインドネシアは、これからの時代に注目される国です。海外に挑戦したい美容師さんにメッセージをお願いします。

昔は経験を積んでからと言われていましたが、海外に出たいなら20代のうちにワーキング・ホリデーで経験するのもいいし、美容学校を卒業してすぐ海外に渡ったっていいと思います。

一生この国に住むぞと決意して来ても日本に帰る人はいますが、その経験が帰国後のビジネスに活きたりもします。

ハードルなんて日本でも海外でもどこにだってあります。不安なことはたくさんあると思いますが、まずは出てみてほしい。いま思っているより難しいことではありません。

僕が伝えたいのは、一歩外に出てみることで見える景色があるということ、やりたいことはやった方がいいということです。

「HAIR LOUNGE Ryoji Sakate(ヘアラウンジ リョウジ・サカテ)」1号店

HAIR LOUNGE Ryoji Sakate(ヘアラウンジ リョウジ・サカテ)
http://www.ryojisakate.com/

坂手遼治(さかて・りょうじ)
大阪府出身。20歳で上京し、南青山の美容室で3年務めた後、ロンドンへ語学留学。留学中、ロンドンのサロンで3年間働き、一時帰国後に渡米。ニューヨークのサロンで3年働いて帰国。2015年4月、インドネシア・ジャカルタに「HAIR LOUNGE Ryoji Sakate」1号店をオープン。毎年業績を伸ばし、2019年4月に2号店を出店。

取材・文/大徳明子 撮影/漆戸美保

■ セミナー情報
6月11日(火)に東京・渋谷で開催される「美容サロン様向け 海外進出セミナー」に坂手遼治さんが登壇します。ASEANおよび台湾で活躍している美容サロン経営者のリアルな成功体験を聞けるチャンスです!
※このセミナーは終了しました。
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