
ホットペッパービューティーアカデミーが行う、美容サロンの利用実態調査である「美容センサス」。
物価高が続くなか、「美容センサス2025年上期」のデータから見えてきたのは、「価値を感じる美容には、頻度も単価も惜しまない」というメリハリの効いた消費行動です。
全国男女1万3200人の大規模調査から見えるサロン消費の兆しとは?
この大きな潮流のなかでデータを深掘りしながら、チャンスの在り方を探っていきましょう。
文・作表 田中公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
目次
①絶好調のアイビューティー。20代女性の「身だしなみ」へ

まず、最も勢いを感じさせるのがアイビューティー市場です。市場規模は前年比17.4%増の1384億円と、2年連続で2桁成長という驚異的な伸びを記録しました。
この成長を牽引しているのが、若年層の女性です。特に20代女性の利用率は29.0%に達し、前年の21.3%から大きく上昇しています。
実に20代女性の約3人に1人が1年以内にアイビューティーサロンを利用している計算に!

コロナ禍を機に高まった目元への関心は一過性のものに終わらず、今や若い女性たちにとってアイビューティーは「特別な日のため」のものではなく、「身だしなみ」としての日常使いへと定着したと言えるでしょう。
②ネイルは「高頻度利用」が加速。QOL向上のための投資へ?

「高頻度化」の波が来ているのが、ネイルサロンです。市場規模は3年連続で拡大し、過去5年で最大の1455億円に達しました。

注目すべきは、利用頻度の変化です。女性利用者のうち、「年に12回以上(=毎月)」利用する人の割合が27.2%と、この4年間で最も高くなっています。2022年の19.1%から比較すると、その増加は顕著です。
物価高でお財布の紐が固くなるなかでも、ネイルの頻度を維持、むしろ高めている層がいる。これはつまり、ネイルが「日常的に自分の視界に入り、気分を上げてくれる」という、日々の生活の質(QOL)を高めるための投資と捉えられている証拠かもしれません。
アイビューティーとネイル。この2つの市場に共通するのは、「パーツケア」への集中投資というお客さまの意識です。
顔全体や全身もさることながら、まずは「目元」「指先」という細部から美しさをメンテナンスし、常に良い状態でいたいというニーズが、市場を力強く押し上げています。
③美容室は「合わせ技」で単価アップ。男性市場にも変化の兆し

美容室の市場規模は1兆3884億円と、過去5年で最大を記録しました。その最大の原動力が、1回あたりの利用金額の上昇です。
1回あたりの利用金額は女性が7668円、男性が4879円と、ともに過去5年で最高額を更新しています。

女性の単価アップを支えているのが、複数メニューを組み合わせる「クロスセル」、いわば「合わせ技」の提案です。
今回の調査でも、単価の高い「縮毛矯正」といったメニューに加えて、「まつげメニュー」などを同時に提案する動きが1回あたりの利用金額上昇の一因と捉えています。
カットやカラーに加える「トリートメント」や「ヘッドスパ」といったプラスワンメニューは、お客さまの満足度を高めながら、自然な形で単価アップにつなげる強力な武器になります。

そして、見逃せないのが男性客の1回あたりの金額上昇です。
もはや「男性はカットだけ」という時代は終わりつつあります。カットに「眉カット」や「ヘッドスパ」をプラスする。または「パーマ」に挑戦する。そうした「カット以外のメニュー」への需要が、着実に高まっている証拠です。
男性のお客さまへの「ついで利用」を促す一言が、サロンの売上を大きく変えるかもしれません。
