美容室の市場規模、ここ5年で最大の1兆3884億円に 単価の上昇は物価高以外にも?

特集・インタビュー

④安定成長を続けるリラクゼーション

ホットペッパービューティーアカデミー、2025年上期の美容センサス

続いてリラクゼーションサロン市場を見てみましょう。市場規模は3年連続で拡大し、3798億円とこちらも過去5年で最大となりました。

ホットペッパービューティーアカデミー、2025年上期の美容センサス

単価も上昇傾向にあり、特に、もみほぐしや整体といった「着衣の施術」では、1回あたりの利用金額が女性5196円、男性4792円といずれもここ3年で最も高くなっています。

この背景には、在宅勤務の定着による運動不足やスマートフォンの長時間使用による「スマホ疲れ」といった、現代人ならではの身体的ストレスの増加があると考えられます。

全身のもみほぐしだけでなく、「ドライヘッドスパ」もここ数年男女ともに人気です。

利用時間もじっくり1時間以上かけて施術するものから、10分程度の短時間のメニューまで。日常のメンテナンスとして定着しつつある様子がうかがえます。

⑤苦戦が続くエステ脱毛。選択肢の多様化で顧客はどこへ?

ホットペッパービューティーアカデミー、2025年上期の美容センサス

好調なジャンルがある一方、厳しい状況に直面しているのがエステサロン、特に脱毛分野です。

エステサロン全体の市場規模は前年の3948億円から3360億円となり、14.9%のマイナスとなりましたが、その主な要因は脱毛市場の縮小です。

脱毛の市場規模は、2021年からの4年間で672億円も減少しています。

ホットペッパービューティーアカデミー、2025年上期の美容センサス

女性の1年以内の利用率を見ると、2021年の9.3%から2025年には5.2%へと右肩下がりが続いており、利用者離れが顕著です。2025年には男性のサロン利用率が上回る結果となりました。

この背景には、医療脱毛や家庭用脱毛器といった「選択肢の多様化」があります。また大手脱毛サロンの倒産といったニュースも、消費者のサロン選びを慎重にさせているかもしれません。

ただし、同じエステでもフェイシャルやボディ/痩身の分野は、比較的安定した市場規模を維持しています。

ホットペッパービューティーアカデミー、2025年上期の美容センサス

特に注目したいのがフェイシャルサロンの動向です。

今回の調査では、1回あたりの利用金額が10,001円以上という、高単価層のお客さまの割合が上昇傾向にあるという、明るい兆しも見られました。

これは、お客さまが専門性や高い効果を求めて、価値を感じるサービスにはしっかり投資する「ご褒美需要」の意識の表れとも考えられます。

このことから、ひとくちにエステサロンといっても、脱毛サロンは「多様な選択肢のなかでいかに選ばれるか」という課題に、フェイシャルや痩身サロンは「より高い専門性や効果への期待」というチャンスに、それぞれ向き合っていることが分かります。

分野ごとに異なる市場環境を捉え、戦略を立てていく必要がありそうです。

【新潮流】理容室に眠る「女性顔そり」という鉱脈

最後に、今回の調査から見えてきた新しい市場の可能性に触れたいと思います。それは理容室の女性利用です。

2025年の調査から、女性の理容室利用についても聴取を開始しました。その結果、女性の1年以内の利用率は4.6%とまだ少数派ではあるものの、注目すべきデータが見つかりました。

ホットペッパービューティーアカデミー、2025年上期の美容センサス

利用した女性にメニューを聞いたところ、「カット」(79.2%)「カラー」(36.6%)に次いで多かったのが、「顔そり」だったのです。その割合は26.7%。利用者の4人に1人以上が、顔そりを求めて理容室のドアを叩いているのです。

これは、多くの理容室にとって大きなチャンスの兆しではないでしょうか。

「男性が行く場所」というイメージが強い理容室ですが、化粧ノリを良くしたい、肌をトーンアップさせたいという女性の「顔そりニーズ」は、確実に存在します。

個室の設置や女性向けシェービングメニューの強化など、女性客を受け入れる体制を整えることで、これまでとは全く違う新しい顧客層を開拓できる可能性を秘めているでしょう。

■ データ出典

ホットペッパービューティーアカデミー

>> 美容センサス2025年上期

■調査期間

2025年1月27日~2月12日

■調査対象

全国、人口20万人以上の都市に居住する15~69歳の男女各6600人

※市場規模推計の値は小数第1位を四捨五入しているため、差分や合計値において、単純計算した数値と合致しない場合があります。

ホットペッパービューティーアカデミー研究 田中 公子さん

中 公子

ホットペッパービューティーアカデミー研究員

TANAKA KIMIKO/前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。調査研究員として、「美容センサス」をはじめとする美容サロン利用調査や美容消費の兆しを発信。セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。共著に『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか。

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