サロンオーナーへの教訓
今回の判例から導ける実務ポイントは次のとおりです。
教訓1 給料を減額するなら書面で詳細を示すべし
・新しい給与体系の計算方法
・減額・増額の条件
・実際の手取りのシミュレーション
を伝えることが重要です。
デメリットだけでなくメリットもしっかり示す必要があります。
教訓2 個別面談で同意を得るべし
・ミーティングで一方的に伝えるだけでは「自由意思の同意」と認められない
・個別に説明し、書面で同意を取得するのが必須
ということで、スタッフがちゃんと同意したという証拠を残しましょう。
教訓3 一方的な減額は原則NG
・経営不振が理由でも、スタッフの合意なしに大幅に減額するのは危険
・合意を得られない場合は「就業規則の変更」など法的手続が必要
であることをしっかり理解し、弁護士に相談しながら進めましょう。

さいごに
「売上が落ちたから、ちょっとお給料を減らすね」
その「ちょっと」が、裁判になればサロンにとって致命傷になる可能性があります。
今回の判例は「自由意思で同意した」と言える手続を踏んでいなければ、賃金変更は無効になるという教訓を突きつけてくれました。
「給与体系を変えたいな」と思ったら、まずは弁護士をはじめとする専門家に相談を。
「ちゃんとした手順」を踏むことが、トラブル防止の最短ルートです。
それでは、また来週。

松本 隆
弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー
早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。
横浜二幸法律事務所
▽公式サイト=http://y-niko.jp/
▽TEL=045-651-5115
監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士)
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