繁盛店の時短マネジメント術 HEAVENS 小松敦さん「ていねいかつスムーズな施術で信頼と安心につなげる」

特集・インタビュー
繁盛店の時短マネジメント術 HEAVENS 小松敦さん「ていねいかつスムーズな施術で信頼と安心につなげる」

新しいサロンワーク様式において、美容師が取り組むべき「時短」とは? 美容業界のオピニオンリーダーとして、またプレイングマネジャーとしての考えを、HEAVENS代表・小松 敦氏に聞きました。

文・写真 女性モード社

時間の価値を高める

HEAVENS 時間の価値を高める

長く現役の美容師として、美容業界の価値観の変遷を見てきましたが、これまでは「生産性アップ」をキーワードに、カット、パーマ、カラーの施術時間を短縮することで「客単価アップ」につなげようという取り組みが活発でした。

つまり「時短」とは、生産性アップ、客単価アップのためのテーマであり、そのための方法論が数多く交わされてきました。よって「時短」という言葉には、ビジネス色が強いといった印象を抱く人が多いのではないかと思います。

しかし、新しいサロンワーク様式が求められる中、私たちがとり組むべき課題は、方法論的な時短やもうけようとするための時短、というよりは、「時間の価値を高め、信頼・安心につなげること」だと思います。

サービス業に従事する立場として、お客さまにどのようにサロンでの時間を過ごしていただくかというテーマに、今こそ向き合い、新しい価値観を見出していくべきではないでしょうか。

HEAVENS 美容師の仕事に焦点をあてた映像を制作中
カット中のハサミの動きや音など、美容師の仕事に焦点をあてた映像を制作中。「お客さまがサロンで過ごす時間をイメージできるビジュアルづくり」という新たなジャンルに挑戦している
 
 

単純に滞在時間を短くすることで、お客さまの満足・信頼が高まるのかというと、そうでもないと思います。

全国のさまざまな業態の美容オーナー仲間とSNSを通してコミュニケーションをとっていますが、あるオーナーは「こんな時だからこそ、ゆっくり過ごしてもらいたい」とおっしゃっていました。お客さまを早く帰そうとするがあまり、せかせかした雰囲気を漂わせているようでは、お客さまにストレスを感じさせてしまうのだと。確かにそれも一理あります。

技術はていねいに、スムーズに

「料金に対する適正時間」という考え方もあると思います。高価格サロンには、カットに時間をかける高価格サロンがある一方で、クイックメニューで短時間での施術を売りにしているサロンもあります。

両者とも、「料金に対する適正時間」を追求していることには変わりないのです。1時間なのか30分なのか、その長短を問うよりもむしろ大切なのは、その時間を「どう過ごしてもらうか」だと思います。

お客さまに美容室で過ごしてもらう時間において、常に心がけているのは、「技術はていねいかつスムーズに、コミュニケーションはしっかりとる」ということです。それには、一度で、迷わず決められる技術の習得が必須です。

美味しい料理に定評のあるシェフは、その仕事の一つ一つに無駄がなくスムーズで、つくっている工程自体が美味しそうに見えます。美容師の仕事も同様です。カットする時のリズムやハサミが触れる音、髪を触った時の感触、それら一つ一つが研ぎ澄まされ、お客さまの心に届くためには、迷いや無駄のない、確かな技術が必要です。

だからこそ、私たちは毎日、一所懸命技術を研磨し続けていかなければならないのです。

HEAVENS 先輩からアドバイスを受け、トレーニングに臨むスタッフたち
先輩からアドバイスを受け、トレーニングに臨むスタッフたち
HEAVENS 営業前にカットの練習を行なうスタッフ
迷わずボブを切れるために–。営業前にカットの練習を行う

迷いなく、一度で決める技術は簡単に身につくものではありませんが、「おさえどころ」を知っておく必要はあります。例えば、よくカット講習で話していることで、カットを勉強する時にハサミを持つ手の方を気にする人が多いけど実は逆だという話。パネルを持つ手を意識し、これを上手に使えることがカットの上達には欠かせないのです。

一度に正しくパネルを引き出すことは実は難しく、これがあいまいだったり、適当だったりして、上手く切れない人がたくさんいます。

もっと言うと、その前の段階であるコーミングやブロッキングも大切な工程です。素材の状態を感じながら、毛流通りに髪をコーミングできること、仕上がりを明確にイメージしながら一度でパート分けできること、これらを踏まえてトレーニングを重ねるとよいでしょう。

トレーニングの時は、時間を計ることが重要です。技術の無駄を省くには、どこに時間がかかっているのかを知る必要があるからです。

これはサロンワークでも同様です。時間への意識強化のとり組みの一環として、HEAVENSではスタッフが個々にタイマーを持つことを禁止しています。基本的には店内に2ヵ所設置してある掛け時計のみで時間を把握しています。

タイマー頼りにならず、個々人の「体内時計」を最大限に機能させることが目的です。施術にどれくらいの時間がかかっているか、お客さまは何分待っているかなど、常に神経を研ぎ澄ませながら時間と向き合うようにしています。

HEAVENS店内に設置されている掛け時計
HEAVENSではタイマーの使用はNG。基本的には店内に2ヶ所設置されている「掛け時計」と「体内時計」により、スタッフが個々に時間を管理している

技術の研磨とサロンワークを通して時間の価値を高め、お客さまの信頼を得ることは、生涯顧客の獲得を目指す上でとても重要な取り組みです。仕事の質や意味合いなど、長年同じ価値観で当たり前にやってきたことも、ここであらためて見直してみると、新しい発見や前向きな改善につながるヒントが見つかるかもしれません。

地域性やサロンの規模、業態を問わず、また、オーナー、若いスタッフのいずれの世代の美容師も、今こそ考えてみることをおすすめします。

HEAVENS

小松 敦HEAVENS代表)
山形県鶴岡市出身、日本美容専門学校卒業、1993年HEAVENS設立。現在グループブランドで東京・表参道と代々木上原に4店舗を展開。最近では、ヘアデザインの表現思考「リアリティブ」を提唱。他に全国でライブセミナーや独自地域イベントなど精力的に活動している。Leica愛好家でもある。著書に『似合う髪 美しい髪 新しい髪』(女性モード社)。

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『スピード施術徹底マスター』女性モード社
※この記事は『スピード施術徹底マスター』の文章・画像を流用しています
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美容師向け出版物を発行して60年。『ヘアモード』『美容の経営プラン』『美容界』などの月刊誌や各種書籍を発行する美容専門出版社。

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