近代美容の創成。技術志向からお客様志向へ

【連載】この先を知る。過去を知れば未来がわかる③


近代美容の創成。技術志向からお客様志向へ

 

【新春 特別企画】
この先を知る。過去を知れば未来がわかる。

ウエラジャパン営業副本部長、資生堂プロフェッショナル常務取締役営業戦略本部長を歴任した春田牧彦氏(ピンポン社長)が、美容業界の歴史を振り返ります。

近代美容の創成。カット&パーマベースの“聖子ちゃんカット”

時代が変われば髪形が変わる。髪形が変われば技術が変わる。

ヴィダルサスーンが世に送り出したブラントカットは、当時のあこがれだった西洋のライフスタイルを代表するものでした。

その簡便なスタイリング方法もあいまって、萩原宗氏を始めとする多くの先進的な技術者によって70年代に日本で一気に広がります。

 

それまでのセットでのスタイリングを前提としたパーマスタイルは、このブラントカットの登場によってその存在感を失います。

代わりに、スタイリングが楽なカットをベースにしたブロースタイルが女性のヘアの定番となるのです。

 

1980年から1981年に大ヒットした“聖子ちゃんカット”は、まさにカット&パーマベースのブロースタイルです。

それまでの「パーマでフォルムを作り、セットでスタイリングする」という考えから「カットでフォルム、パーマでニュアンスを作り、ブローでスタイルングする」というヘアスタイルへのイノベーションが起きたのです。

教育がシステム化。サロンスタイルのコンテスト誕生

このイノベーションは、サスーンカットという技法と共に日本の美容業界にシステム化された教育をもたらしました。

今ではあって当たり前の技術マニュアル、テキスト、教育プログラムは、この時代に生まれたものです。

 

また、今日活発に開催されているサロンスタイルのモードコンテストは、この時代に技術奨励を目的に萩原宗氏が世界に先駆けて手掛けたカットコンテストを起源としているのです。

この時代の日本の美容業界は、サスーンによる技術のイノベーションに端を発した近代美容の創成期だったのです。

バブルの時代。身だしなみからファッションに

こうした中、1986年から日本経済はバブル期を迎えます。

バブルは美容業界にこれといった恩恵はもたらしませんでした。むしろ女性の主張が強まり、それまでの女性の定番スタイルであったパーマスタイルが否定されヘアデザインの方向性を失いました。

 

この時代に流行ったスタイルは、ソバージュやサーファーカット。さらにワンレングスのロングストレートヘアなど。

それぞれのライフスタイルから生まれたヘアスタイルのバリエーション。美容サービスが、身だしなみからファッションの色合いを濃くしていった時代です。

 

その背景には、団塊ジュニアという団塊世代に次ぐ人口のボリュームゾーンが思春期となり、力強く若者文化を世に広めていったことがあります。

1990年になって起きた“茶髪ブーム”は、こうした時代を象徴した出来事であり、以降この団塊ジュニアの影響力によってさまざまなトレンドが生み出されます。

プロダクトアウトからマーケットインへ

美容室のカウンセリング

技術志向からお客様志向への変化に伴い、カウンセリングが普及する

こうして1980年代後期から1990年代前期に、美容業界にパラダイム転換が起きます。

それまでの「技術(プロセス)重視」から「お客様(結果)重視」への転換です。

 

サスーンのブラントカットの普及ともに根づいた技術志向は、技術レベルとお客様からの評価を等価と捉え、技術向上に価値を置きました。

これに対して、技術はあくまで手段であり、お客様からの評価に価値を置くべきだという思想が台頭したのがこの時期です。

 

マーケティングの見地から言うと「プロダクトアウト」から「マーケットイン」への転換です。

プロダクトアウト(product out、product oriented)とは、作り手の理論を優先させる方法のことです。

それに対してマーケットイン(market in、market oriented)とは、ニーズを優先し、顧客の声や視点を重視して提供していくことです。プロダクトアウトの対義語であり、「顧客が望むものを作る」という考え方です。

先生からヘアデザイナーへ。技術者よりもカリスマへ

美容室のあり方がこのように変化したのが1990年代初頭です。

こうした変化によって、この時代に生まれたお客様へのサービス向上、評価向上を狙ったのが、予約制やカウンセリングシステムなのです。

 

いかにしてお客様に喜んでいただくか、技術の良し悪しよりもお客様の評価に価値を置く。

これによって美容業界においても評価される美容師さんが変わります。

しっかりとした技術理論をたずさえ、独自のカット技法を持った教育者(先生)を目指すというあり方から、この時期を境に、多くのお客様の支持を仰ぎ、一般雑誌などのメディアで取り上げられるような話題の美容師(人気デザイナー)が人気を博すようになるのです。

 

上手い技術者よりも売れる美容師。

これを代表するのが後、にカリスマといわれる当時の超売れっこ美容師さんだったのです。

これによって美容業界はカリスマブームの時代を迎えます。

 

春田牧彦(はるた・まきひこ)
株式会社ピンポン代表取締役社長。日本大学経済学部卒。ウエラジャパン営業副本部長、資生堂プロフェッショナル常務取締役営業戦略本部長を歴任。2012年、(株)ピンポンを設立。美容業の持つポテンシャルを生かす情報と具体的戦略を提供する。

 


関連記事

新着記事

PR