ギターも売る美容室「マニックマンデー」 Jobシンガー・missatoが行く(1)

特集・インタビュー

有栖川さんの仕事観

自分を選んでくれる人を大切に

うちの予約サイトの一番最初の画像ってギターなんですよ。なので、音楽が好きな人か、うちをおもしろがってくれる方が来てくださいます。

さっき、取材が始まってすぐに、「今日やってる?」って常連の方が来たでしょう? ああやって駄菓子屋に来るような感覚で寄ってくれる関係性がうれしいですね。僕は、昭和っぽい人情あふれるつながりが好きなんだなと思います。

うちに来るのは、「美容室はちょっと苦手」って方が多いんですよ。ここは僕ひとりでやっていて、自分の好きなものを表現させてもらっているので、お客さまも気負わずに好きなものを表現できる空間になればいいなと思います。

Manic Mondayは日常と切り離された空間になっているので、自分の好きなものを気兼ねなく語ってもらったり、困っていることや溜まっているものを吐き出していったりしてほしいですね。

プラモデルの箱が積まれたManic Mondayの店内
Manic Mondayに飾られているプラモデル
幼少期からプラモデルにはまり、ギターの改造は学生からずっとハマっていたそう。店内にはコレクションがところ狭しと置いてあります

美容師としてのこだわり

お客さまが自宅でスタイルを再現できること、これが一番大事だと思っています。洗いざらしに手ぐしでも、ある程度スタイルがまとまる感じで、2~3カ月経っても変にならないようにこだわって施術しています。

美容師の使う道具がお客さまの家にもあると勘違いしない。お客さまの髪質や毛量を言い訳にしない。お客さまが困っていることを解決できるのが、この仕事の楽しいところなので。

そうやって信頼を重ねていくことで、うちみたいな“おもしろ美容室”でもやっていけるんだと思います。

あとは、ベーシックをしっかりやって、普遍的な物がちゃんとつくれる美容師でありたいと思っています。

美容師になってからソバージュブームが来たのでパーマを学び、その後も、カラー、縮毛矯正、エクステのブームが来ました。その時だけの流行りで終わらせず、ブームの時の経験を自身の技術にできました。見た目はこんなですけど、結構なんでもできますよ。

Jobシンガーmissato氏の髪を直す有栖川ヨハン氏(Manic Monday)
撮影中、何度も悩まされたmissatoの前髪をあっという間にセットしてくださいました

仕事と音楽

美容師は「天職」

人の役に立ちたい、困っている人には親切にしたい、人を喜ばせたい。仕事に限らず、この思いが根っこにあります。「好きなことを仕事にするのはあまりよくない」っていう意見もありますけど、半分正解で半分不正解だと思っています。

例えば、僕はギターの修理やプラモデル関係も仕事にできると思います。どちらも好きなことだけど、一日中はやれないしやりたくない。でも、美容の仕事は「忙しくてお昼抜き」や「立ちっぱなしで十数時間」とかも全然気にならない。ずっとやっていても平気なことって、“好きなこと”の中でもなかなか特殊な存在じゃないですか?

人を喜ばせたい、人の役に立ちたいっていう大きな軸があって、さらに、自分の好きなことができている。そういう仕事に出会えたので、美容師は「天職」だと思っているんです。

ギターを抱える有栖川ヨハン氏(Manic Monday)
「ずっとやっていても平気なことって、“好きなこと”の中でも特殊な存在じゃないですか?」と話す有栖川さんからは仕事への情熱が伝わります

音楽は「自己満足」

逆に音楽に関しては、好きなことだけど、人にどう思われようとどうでもいいんです。完全に自己満足。もしも自分の歌を聴いてくれて、「感動しました。僕もギターをやってみたいです」って言ってくれる人がいるならおもしろいなくらいの感覚です。

大型店に勤めていた25年間は、美容師ひとすじで音楽は全然やっていなくて、独立するタイミングで音楽を再開しました。

弾き語りでもやろうかなと思っていたら、バンドメンバーに出会えたり、お客さまとして知り合いだった方の音楽スタジオがこの店のすぐ近くだったり、あれよあれよとおもしろいご縁がつながって、昔より肩の力を抜いて音楽ができています。

Manic Mondayに飾られている音楽仲間との写真
音楽仲間との写真が飾られているボード

続けた先にしか未来はない

脱線しちゃうかもしれないですけど、音楽にしても絵にしても学問的になりすぎず、自分がおもしろいと思うように工夫しながら続けていけたらいいのにって思います。壁にぶつかった時に、言い訳してやめちゃう前に。

ギターを始めたばかりの人がFコードが難しくて挫折するというのは、よく聞く話ですよね。テレビを見ていたら、所ジョージさんが「6本弦があるのに5本指で押さえるの無理じゃない? 4本鳴っていようが3本鳴っていようがFだからいいんだよ」って言っていて。「確かに!」と思って、僕は挫折せずに済んだんです。

始める前から終わることを考えるのではなく、続くように考えればいい。自分が楽しくなるように、工夫すればいい。何かを始めた先、続けた先にしか未来はないと僕は思っています。

⑤有栖川さんの描く未来

好きなことを詰めこむ

独立したら2店舗、3店舗と増やしていく方が多いですが、僕はこの店に好きなことを詰めこんでいこうとたくらんでいます。

このビルには地下があるんですけど、その空間を借りてライブハウスにしたいんです。3階が空いているので、そこで古着屋もやりたい。古着をリメイクするのも好きですし、家内が服飾系の専門学校を出ていてミシンを使えるのでちょうどいいなと。2階が飲み屋さんなので、地下でライブした後に打ち上げもできちゃいます。

ヘアセットができて、衣装もギターも買えて、ライブができて、打ち上げもできるという最高のビルです 笑

ビルごと買って、おもしろいと思うことを全部詰めこんでいきたいです。どなたか出資してください!

ギターも売る平塚の美容室「マニックマンデー」のビル
Manic Mondayは平塚の繁華街、紅谷町にあります。地下でライブができて衣装も楽器もヘアセットもとなったら最高ですね!

大人になると夢ってちょっと茶化しちゃったりするんですけど、人に話さないと夢は叶わないと思っています。「こうしたい」じゃなくて「こうなる」って自分が一番思っていないとね。人に何を言われようと、自分が自分のファンじゃなきゃ。

そうやって周りを巻きこむこと自体、おもしろいんですよ。例えば、Manic Mondayにライブのフライヤーを置いたら、それだけで人と人がつながりますよね。自分ができることがあるなら協力したいと思っています。

有栖川ヨハン氏(Manic Monday)とJobシンガーmissato氏
サービス精神あふれる有栖川さん。ご自身で作詞作曲したお店のテーマソングを弾き語ってくれました

次のページ/チョキチョキ切っても切れないもの
「自分からの感謝は、切ろうと思わなければ切れません」

AD(エレガンジェット)
宮永えいと×ビューティガレージ(512×512)
AD(ビューティガレージ)

関連キーワード

注目キーワード

新着記事一覧   トップページ  
Top