ギターも売る美容室「マニックマンデー」 Jobシンガー・missatoが行く(1)

特集・インタビュー

一日中、音楽の流れている美容室。有線放送、ラジオ、CD、なかにはレコードをかけているこだわりのサロンも。

独立してお店を構えることを“自分の城を持つ”と言いますが、自身でつくった居心地のいい空間で、好きな音楽を聴きながら仕事をできるというのは、美容師という職業の魅力のひとつではないでしょうか?

そこでビュートピアでは、音楽が好きな美容師さんの連載を始めます!

インタビュアーを務めるのは、働く人にインタビューして曲をつくり歌として届ける「Jobシンガー」のmissato(みさと)さん。

第1回は、神奈川・平塚の美容室「Manic Monday(マニックマンデー)」の代表・有栖川ヨハンさんにお話を聞きました。

ギターも売る美容室「マニックマンデー」 Jobシンガー・missatoが行く(1)

「働く人に寄りそって曲をつくり歌います」

Jobシンガーmissato氏

はじめまして。Jobシンガーのmissato(みさと)です。

Jobシンガーとは、実際に現場を見学し、時にはいっしょに作業を体験し、自分でインタビューを行い、働く人に寄りそって曲をつくり歌うという職業です。

職業です、と言いましたが、元からあるものではなく、自分で発見した生き方です。

私は14歳からシンガーソングライターとして作詞作曲を始めたのですが、一度は社会人として就職しました。

その社会経験を原動力に“音楽”と“働くこと”をハイブリッドさせたJobシンガーになり、「美容師の歌」「保育者の歌」「タクシー運転手の歌」などを歌っています。

この連載では、音楽が好きな美容師さんに、仕事と音楽についてお聞きしていきたいと思います。

第1回は、2018年9月にオープンし、もうすぐ4周年を迎える、神奈川・平塚の「Manic Monday」。

古物商の許可をとり、楽器やプラモデルも販売しているというユニークなサロンです。代表で店長の有栖川ヨハンさんにお話を聞きました。

自分で選んできた道。でも、導かれたような気がする

有栖川ヨハン氏(Manic Monday)
パンクロック好きの有栖川さん。ご自身も「THE ギラツカス」というスリーピースバンドを結成し、毎月ライブを行っているそうです

美容師、音楽、始めたきっかけ

美容師になったのは、自分にとって身近な職業だったから。これといって目指していたとかではなく、叔母が美容師をやっていた影響ですね。

音楽は高校生くらいからパンクバンドを始めました。美容師をやりながら23歳ごろまで、オーディションを受けたり毎週日曜にバンド仲間と練習したり。

音楽で食べていきたいと思っていたこともあったけれど、美容の世界が楽しくなって、のめりこんでいきましたね。

美容師の自分と土日休みの仲間との練習時間が合わなくてバンドを解散したり、デビューが決まっていた尊敬するミュージシャンの先輩が好きなように音楽ができずに葛藤している姿を見たりして、「極めたいのは音楽じゃないかもしれないな」って自覚したんです。

ギターを抱える有栖川ヨハン氏(Manic Monday)
「これがあると落ち着くから」とマイギターを抱えてインタビューに応じる有栖川さん

Manic Mondayの由来

独立前は大型店に25年間勤めました。店長も経験させてもらったので本当に感謝していますが、このまま年齢を重ねていいのかという思いが大きくなり、独立を決意しました。

本当に勢いだけで出てきてしまったので、何も決まっていなかったんです。それが導かれたように、美容室の居抜き物件がすぐに見つかり、即決。自分の意思だけでなく運命を感じましたね。

お店の名前を考えている時、姓名診断ができる友達から「アルファベットのMで始まる二つの単語を並べた方がいいよ」って言われたんです。でも、なかなかないんですよ、これが。

そんな時に部屋を片づけていたらCDの棚がバタバタって崩れて、その中にThe Bangles(バングルス)の「Manic Monday」があったんです。「M2つ!」と直感で決めました。

月曜の朝に「今日が日曜だったらいいのに」と歌っている曲なので、じゃあ、休みにしようと。(関東の)美容室は火曜休みが多いけど、うちが月曜休みなのはそういう理由です。

有栖川ヨハン氏(Manic Monday)とJobシンガーmissato氏
実は「有栖川」は本名ではなく、美容師と音楽活動での名前。少女が人生の困難を乗り越えて行く「不思議の国のアリス」のストーリーが好きで付けたそうです
中古ギターが販売されているManic Monday
The Banglesの名曲から名づけられたManic Monday。通りからも見えるエントランスのギターやアコーディオンは、飾りではなく売り物です

おもしろいことはなんでもやりたい

うちの看板は「ヘアサロン〇〇」とか「美容室〇〇」とは書かず、Manic Mondayの文字だけ。もちろん美容室は軸だけど、「おもしろいことをする空間」としてなんでもやりたいんです。

実は、プラモデルもギターも最初から置いていたわけではなく、最初はインテリアとしてギターを数本飾っていただけです。コロナ禍で店がひまになったので販売を始めたら、いつの間にか唯一無二の特徴になっていました。

Manic Mondayの店頭にあるギター
道行く人は美容室だと気づかないのでは? さながら楽器店に見えます

忘れられないお客さま

初指名はシャンプー

いい思い出と苦い思い出、両方あります。いい思い出は、一番最初に指名してもらえた時のことです。

元々は理容師で、髪を切ってもらっていた理容室で働き始めたんです。そこのオーナーと、自分が後に25年間お世話になる美容室のオーナーとが知り合いで、将来は理容室と美容室を併設してユニセックスサロンにしようという話が出ていました。

美容師の方がやれることの幅が広がると思ったので、美容専門学校の通信教育を受けながら美容室で働かせてもらうことにしました。それと、美容師の方がモテそうだったから。まだ20歳くらいだったので 笑

美容室の同期は女性3人で、みんな器用な人たち。自分はどちらかというと落ちこぼれでした。何かひとつ絶対に負けないものをつくりたいと思い、基礎であるシャンプーを極めることにしたんです。

お客さまの好みを聞いて研究したり、先輩につきっきりで教えてもらったりしていたら、ある時、お客さまからシャンプーで指名してもらえたんです。それが一番最初に自信がついた経験でしたね。

その方に「髪を切れるようになったら切ってね」って言われたら、もうがんばるしかないですよね。期待に応えたいという思いがモチベーションになりました。

平塚の美容室「マニックマンデー」のシャンプー台
アシスタント時代にシャンプーを極めた有栖川さん。Manic Mondayのシャンプー台の後ろの棚にはプラモデルがぎっしり

何も言わずに去った仲良し

次に、苦い思い出の方。若い頃はヘビースモーカーでした。ある時、すごく仲が良かったお客さまが来店される前、昼休憩でタバコを吸ったんです。

その方はタバコを吸わない人で、「失礼します」と髪を触った瞬間、少しイヤな顔をして。その後、二度と来店してもらえませんでした。

本当の理由はわからないですけど、ものすごく後悔が残りました。良い気持ちで帰っていただくのが、美容師という仕事の使命だと思います。これがきっかけで禁煙しましたよ、僕。

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「うちの予約サイトの一番最初の画像ってギターなんですよ」

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