
弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。
第62回は美容師の試用期間と解雇を取り上げます。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
目次
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

こんにちは!弁護士の松本隆です。
この連載では「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りしています。
事例から見てみましょう。
私はXサロンの経営者でAといいます。
今年、従業員としてYさんを雇いました。試用期間は3カ月です。
しかし、試用期間中のYさんの勤務態度が悪いのみならず、スタイリストとしての経験は5年であると言っていたのに2年しかなかったことが発覚しました。
そこで残念ながら、Yさんにはこの試用期間が終わった時点で辞めてもらいたいと思っていますが、解雇してしまっていいのでしょうか?

はじめに
「試用期間中だし、うちの店に合わないようなら解雇しよう」と思っていませんか?
実はこれ、大きな誤解です。
この記事では、美容師の試用期間に関する法的な位置づけと、解雇にあたって注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
試用期間って何?
試用期間とは、正式な採用を前提として、美容師としての適性や勤務態度を一定期間見極めるために設けられる制度です。
一般的には1カ月〜3カ月程度が多いですが、6カ月以上に及ぶケースもあります。
ただし、試用期間中であっても「すでに労働契約が成立している」状態ですので、自由に解雇をしていいわけではないのです。
試用期間中の解雇と本採用後の解雇の違いは…
解雇をするためには「客観的合理性」や「社会通念上の相当性」が必要となります。
※解雇の基本的な話については第4回の記事をご参照下さい。
そして、試用期間中の解雇と本採用後の解雇とでは、解雇のハードルに大きな差があります。
試用期間は、あくまで「本採用を前提とした見極めの期間」のため、ある程度は柔軟な判断が許される可能性があります。
また、試用期間の解雇にも2つのパターンがあり、「試用期間中の解雇」と試用期間終了後に「本採用を拒否」する場合には扱いが異なります。
イメージ的には「試用期間終了までしっかり見極めた」という意味で「本採用を拒否」する方が正当な解雇だったと認められやすい傾向にあります。
これに対して、本採用後は安定した雇用関係が前提となるため、「本採用後の解雇」はより慎重かつ厳格な条件のもとでなければ認められません。
なお、解雇予告についても違いがあります。
試用期間中であっても、14日を超えて雇用されている場合には、30日前の解雇予告または予告手当が必要になります。
