カテゴリー: 特集・インタビュー

人情深さが多世代を惹きつける Barber151 吉田信さん Jobシンガー・missatoが行く(5)

「働く人に寄りそって曲をつくり歌います」

photo by Miho Urushido

こんにちは。Jobシンガーのmissato(みさと)です。

Jobシンガーとして、さまざまなしごと場に取材にいったり、現場作業を体験させてもらい、職業の曲を作詞作曲、歌う活動をしています。少しずつ曲数も増え、今は「美容師の歌」「保育者の歌」「タクシー運転手の歌」など11曲になりました。

今後も新しい職業ソングを増やしていく予定です。いろんな職業を通して、たくさんの人生や価値観を持った方々にお会いできるのをとても楽しみにしています。

今回の音楽好き理容師・吉田信さん

ロックな雰囲気が漂う吉田さん

吉田 信
よしだ・まこと/Barber151 代表
理容室7店舗での修行を経て、1993年に両親が経営する理容室「いこい(現在はBarber151)」のスタッフとなる。なめらかな仕上がりのスキンフェードを得意とし、学生から年配者まで幅広い層の男性客から支持を得ている。趣味はドラム演奏。
▽Instagram=@barber.151

Barber151
1962年に吉田さんの両親が理容室「いこい」としてオープン。1993年に現在の店名へと変更した。熟練理容師ならではの確かな技術、スタッフの温かな人柄、ロックな雰囲気の店内ディスプレイなど、ほかにはない魅力にあふれている。
▽住所=神奈川県川崎市多摩区登戸新町82-3

理容師になったきっかけ

高校中退で理容師の道へ

2022年に開店60周年を迎えた「Barber151」

吉田家は親戚含めて理容師家系です。昔から、将来は理容師になるんだろうなと思っていました。普通科の高校に通っていたのですが、少しでも早く理容師になりたくて高校を中退し、修行することを決めました。

当時はインターネットがない時代だったから、働き先を見つけるのは大変でしたよ。新聞でスタッフを募集している理容室を探しては、飛び込みで雇ってもらえないかと交渉していき、何とか就職できたんです。

その理容室で働きながら、中央理美容学校の通信制に通い、無事に理容師免許を取得することができました。

JR登戸駅から徒歩6分の場所にあります
理容室ですが「包丁研ぎ」もお願いできます。親戚が鍛冶屋さんなのだとか

理容師人生のスタートは順調でした。就職した理容室の先輩がとてもいい人で、彼が転職する度に僕もついていったんです。結果的には、約6年間で7店舗で働きました。

そして理容師になって6年が過ぎた頃、突然父から連絡がきました。父が経営する理容室のスタッフが辞めて、人手が必要だったようで「理容室を手伝ってほしい」と言われたんです。

ほかならぬ父の頼みとあれば、断る理由はなかったです。1993年から両親が経営する理容室で働くことになりました。

店内は4席。手入れが行き届いた気持ちの良い空間です
待合スペースには、吉田さんが集めたレコードがずらり
Barber151で売られている店販品

初弟子を育てる新たな挑戦

理容師人生は40年以上になりますが、実はこの春、初弟子を迎えます。これまでお客さまとして通っていた18歳の男の子です。1年ほど前から、僕の仕事ぶりを熱心に観察してくれていたんですよ。

僕はずっと誰かに教えたいと思っていたけど、両親と自分の家族経営だから、長らくその機会が得られませんでした。ようやく夢が叶います!

「この春、弟子に指導できるのが楽しみです。彼の一生懸命な姿勢がいいんですよね」(吉田さん)
お客さまのヘアカット写真で埋め尽くされた受付スペース。この中にお弟子さんの姿もあるかも!?

Barber151の由来

両親が独立する前に働いていた理容室の店名が「いこい」だったそうです。父と母はそのエッセンスを残そうと、自分たちのお店にも「いこい」と名付けました。

「いこい」をオープンしてから今年で60周年になりますが、この間に「イコイ」「IKOI」など、時代の流れに合わせて店名の表記を変えています。現在の「Barber151」になったのは1993年から。僕がここで働き始めたタイミングで、表記を変えました。

Barber151は吉田さんワールド全開! イスにブーツを履かせるなんてユニークです
店内入口では、黒い帽子とマスクでロックな風貌のセントバーナードがお出迎え

忘れられないお客さま

高齢者施設で出会ったおばあちゃん

忘れられないお客さまは、高齢者施設での出張ヘアカットで出会ったおばあちゃんです。

年齢を重ねている方々は、声を発したり表情をつくったりすることが難しくなるんですよ。そのおばあちゃんも声を発しにくいようでしたが、髪をカットし終えたところ、手を合わせて感謝の気持ちを伝えてくれました。

言葉を発せられなくても「ありがとう」と行動で示してくれたおばあちゃんの姿を見て、思わず涙が出そうになるほど感激しました。

「手を合わせて感謝を表現するおばあちゃんの姿が、忘れられません」と目に涙を浮かべながらお客さまとのエピソードを語ってくれた吉田さん

実はその当時、お酒におぼれて精神状態はボロボロでした。自分の弱さゆえにいろんな人を傷つけて、まさに人生のどん底でしたね……。自分が大嫌いだったし、周りにも迷惑をかけまくっていました。

そんなときに、自分が髪を切り、感謝してもらえたことで救われました。そして、これからは精一杯、人のために生きようって思ったんです。

だから今でもどんなに忙しくても、高齢者施設で月2回はヘアカットをするようにしているんですよ。僕の活動が、少しでも世の中のためになっていればいいなと思っています。

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「触り心地へのこだわり」

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