④グループ一丸で多面的にお客さまのお役に立つ
―― これまで多くの価値を創造してきたわけですが、「今後はより一層、多面的にお客さまの役に立とう」と社員に伝えたそうですね。
既存事業を深化させ、新たな挑戦をし、「One BGG(ビューティガレージグループ)」でシナジーを生むことで、多面的にサロン様の役に立つ企業を目指します。
「開業と繁盛を総合支援する、サロンコンシェルジュNo.1企業」というのが当社のビジョンですが、今年6月に発表した中期経営計画では、5年後の目指す姿をこの「集大成」としました。そのために、プラットフォーマー機能の最大化、店舗開業支援能力の強化、新市場への挑戦の3つを成長戦略に据えています。
―― それを実行していく社員にはどんなことを望みますか?
社員一人ひとりに能動的に動いてほしい。ビューティガレージグループにはたくさんの事業、部署がありますが、連動させないと意味がないので連携が大事です。自立型かつ共創型のマインドを持って日々の業務に取り組んでほしいですね。

⑤3つの成長戦略で1.8倍の620億円へ
―― 中期経営計画では、2029年度の売上高を現在の337億2000万円から1.8倍の620億円に引き上げるという目標を掲げています。ずいぶん高い目標なのでは?
前の5カ年は2019年度の157億3000万円で始まり、2024年度に2.1倍の337億2100万円で着地しました。他のディーラーの売上が伸びにくい中で2ケタ成長を続けることができ、業界トップタイとなりました。同じくらいの成長を続ければ達成できる目標だと考えています。

―― その鍵となる3つの成長戦略、「プラットフォーマー機能の最大化」「店舗開業支援力」「新市場への挑戦」について、ひとつずつお聞きしていきたいと思います。まず、プラットフォーマー機能の最大化とは何をするのですか?
当社の中核であるECサイトは月商20数億円ですが、品ぞろえを強化して、買いやすさ・選びやすさを引き上げます。昔から当社をご存知の方は機器のイメージが強いかもしれませんが、いまは物販事業の6割以上が化粧品・材料で、NBメーカーとの取り引きが年々増えています。生成AIなどの新技術も取り入れて利便性を一層高め、持続的な成長のループを実現します。
そして、累計72万口座の会員情報に基づく巨大なデータベースとコンテンツ制作力をかけあわせて、情報プラットフォームの構築を目指します。昨年はヘアモード社をM&Aし、ヘアカラー毛束検証の「カラログ」に出資しました。グループで力を合わせ、情報発信やコミュニティ形成に力を入れていきます。
また、ECサイトを運営しているからこその圧倒的な物流力を背景とした「フルフィルメントサービス」も、成長ドライバーのひとつです。例えば、サロン様がオリジナルブランドの在庫を保管して注文が入るたびに発送するのは負担が大きいですよね。それを当社が在庫保管も受注も出荷もすべて代行します。これにB2B2Cのサービスである「Salon.EC(サロンドットイーシー)」を組み合わせると、サロン様にとって24時間365日の物販の仕組みが手に入ります。
これらの取り組みを実現させるため、国内3つ目の物流拠点として、今年5月より柏フルフィルメントセンターを稼働しました。約6000坪の巨大センターに最新の機器を導入しています。こうした圧倒的な物流網と品ぞろえがあってこそ、「何でも揃うビューティガレージ」だからこそ、提供できる価値だと思います。
―― 続いて、店舗開業支援力の強化について教えてください。
すべてそうなのですが、店舗開業支援についても既存事業を深化させ、新たな挑戦を行います。
これまでも、社内のサロンコンシェルジュが事業計画の相談に乗ったり、グループ会社のBGパートナーズが物件探しや融資支援、タフデザインプロダクトが内装を手がけるなどの開業支援を行ってきました。
さらに新たな挑戦として、サロン様にとって負担となるバックオフィス業務を支援します。材料の仕入れ、集客や教育、経理の支援、経営分析や確定申告など、BPOサービスを請け負うことで、開業の準備から経営までサロン様を伴走支援します。
また、ビューティガレージ、そしてグループのBGパートナーズ、タフデザインプロダクトが一丸となって取り組むことで「店舗大家No.1企業」を目指します。現状、グループ間の連携が十分ではないため、ここは強化したいですね。
―― 成長戦略の3つ目、新市場への挑戦とは?
サロン様の“三大お悩み”である「採用」「教育」「集客」、これに応えられる企業を中長期的に目指していきます。
また、ウェルネスへも領域を広げます。2021年にジムガレージを設立してフィットネス向け市場に参入し、2024年にはBGのオンラインショップに鍼灸・整骨院向けのカテゴリーを新設しました。2025年にはスパガレージを子会社化して温浴・サウナ向け市場に進出しています。
今後は美容クリニック、歯科医院、動物病院も視野に入れ、「ビューティー&ウェルネス」というより広い領域でお役に立てる企業を目指します。大きな目標ですから、一気にというわけではなく、本業のドメインを活かして徐々に水平展開していきます。
3つの成長戦略
【1】美容サロン業界向けプラットフォーマー機能を最大化
【2】新たな価値創造で店舗開業支援力を大幅に強化
【3】新市場へ果敢に挑戦し、“次の”ビジネスを創造
⑥業界で最も頼られる存在に。ソリューションを第2の柱へ
―― これからの5年の取り組みを詳しくお聞きしましたが、10年後、その先はどのような会社を目指していますか?
まずは多面的に支援する企業となり、サロンコンシェルジュの集大成を成し遂げます。そして長期的には、美容業界においてお客さまから最も頼られる存在になりたいですね。業務提携やM&Aも視野に、幅を狭めずに広く考えていきたいと思います。
―― ソリューションのような伴走する事業が一層重要になるのでしょうか?
そうですね。当社は物を売る会社というイメージが強いのですが、ソリューション事業を物販事業に次ぐ第2の柱として育てていきます。
―― 樺島さんが自ら立ち上げた、資金調達やM&Aを支援するBGパートナーズがまさにソリューション事業の会社ですね。
ビューティガレージでサロン様の出店を支援する中で、やはり資金面のお悩みが大きいと感じていました。そこで2017年にBGパートナーズを立ち上げ、リースを活用して初期費用を抑えるファイナンシャルサポートを始めました。また、事業承継のM&A仲介では、業界に精通している私たちだからこそできる、スタッフの引き継ぎまでを含めたきめ細かいサポートを行っています。
BGパートナーズの業務には、退店サポートもあります。「まだお店を続けたいのに続けられない」という方がたくさんいる現実を目の当たりにして、事業の継続性、サステナブルなサロン経営に貢献したいと強く思うようになりました。新しい取り組みとしてバックオフィス業務を請け負うのも、サロンワークに集中していただける環境を用意したいとの思いからです。
主力の物販ではなく傍流に当たる業務を行うグループ会社の社長として、ある意味、ビューティガレージを外から見るなか、改めて感じたのが知名度と信頼です。この20年で積み重ねられてきたサロン様からの期待を裏切ることはできません。多くのサロン様の経営を支えさせていただいているという責任感を持ち、進化を続けます。
業界で最も頼られる存在、業界で一番「ありがとう」と言われる会社になりたい。そして社員にとっても、より一層、愛着と誇りを持てる会社にしたいと思います。

樺島 義明
ビューティガレージ代表取締役社長兼COO、BGパートナーズ代表取締役社長
かばしま・よしあき/1997年3月に中央大学商学部を卒業。広告代理店で営業職を務めた後、2003年4月、ビューティガレージ取締役に就任。マーチャンダイジンググループ管掌役員等を経て、2017年1月、ビューティガレージグループの株式会社BGパートナーズの代表取締役に就任し、店舗まるごとリースや不動産仲介、M&A仲介等を手がける。2025年7月、ビューティガレージの代表取締役社長兼COOに就任。
取材・文/大徳明子 撮影/漆戸美保


