④カウンセリングや施術の「うれしい配慮」は?

調査では、シーン別に「あったらうれしい配慮」を質問しました。
受付やカウンセリングでは、「ゆっくり・はっきり話してくれる」(受付時:44.8%)、「ゆっくり・わかりやすい言葉で説明してくれる」(カウンセリング時:42.8%)など、話し方に対するニーズがあることが分かります。
また「カウンセリング」「施術」では、「無理に話を続けず、適度な距離感で対応してくれる」(カウンセリング時:51.6%)、「話しかけすぎず、静かに過ごせるよう配慮してくれる」(施術時:56.1%)からは、サロンで特別なことをしようと思いすぎず、お客さまのニーズをくみ取った対応が「心理的な安心感」につながることが分かります。
⑤「対応をお願いできなかった」という背景には?

実際にサロンで困ったことが起きたときには、サロンの対応として「とても丁寧に対応してくれた」「ある程度対応してくれた」が約65%と肯定的評価が多い一方、15.6%が「対応をお願いできなかった」と回答しています。もしかして、サロンでは対応可能でもお客さまのほうから「遠慮して、伝えられずに困ったまま帰られてしまう」ケースが一定数あるということかもしれません。
お客さまは、「こんなことを言ったら、迷惑かな…」と遠慮してしまいがちです。 だからこそ、「言い出しやすい雰囲気」を作ることが大切になります。例えば、施術を始める前に、「もし、しんどくなったり、トイレに行きたくなったりしたら、いつでも遠慮なく声をかけてくださいね」と一言伝える。たったこれだけで、お客さまは「言ってもいいんだ」と安心でき、お店への信頼を深める何よりの気配りになるはずです。
⑥安心して通えるサロン像とは?

理想的なヘアサロン像として最も重視されたのは、「無理に話しかけられず、自分のペースで過ごせる」(62.2%)。次いで、「価格やメニューが分かりやすい」(55.0%)、「自分の特性を理解し丁寧に対応してくれるスタッフがいる」(46.8%)という“心理的負担の少なさ”を重視する傾向が続きました。
ここから見えるのは、「スタッフの対応」こそ、サロン選びの中心軸であるという事実です。
今回の調査では、7割以上の方が「配慮のあるヘアサロンを利用したい」と回答しており、 「安心感を提供できるサロン」を重視されていることが分かります。
⑦美容サロンで知っておきたい対話の事例
ホットペッパービューティーアカデミーの連載記事「障がいがあるお客さまとの向き合い方」では、障がいの特性ごとに美容サロンでの接し方の例をご紹介しています。ここでは、当事者の方から特に共感をいただいた取り組み事例を3つ取り上げていきます。
>> 連載「障がいがあるお客さまとの向き合い方」(ホットペッパービューティーアカデミー)
(1)お話するのは、まず「ご本人」と
付き添いの方がいても、まずはお客さまご本人に「こんにちは!」とお声がけを。これが信頼関係のはじまりです。
・引用元:「#4|車椅子や杖をご利用のお客さまに。明日からできる「心くばり」の接客術」
(2)シンプルな一言が安心して過ごしていただく大切なカギ
「何かお手伝いできることはありますか?」「この体勢はつらくないですか?」など、まずはお声がけから始めましょう。 サポートが必要か、ご本人の意思を確認することが信頼の第一歩です。
・引用元:「#2|美容サロンが押さえておきたい、障がいの基礎知識」
・引用元:「#5|“見えない・見えづらい”お客さまに。明日からのお声がけと接客のヒント」
(3)こまめな確認が安心感を生むことも
例えば、ドライヤーの大きな音、カラー剤特有のにおい、にぎやかな話し声などが強いストレスになることがあります。「今日のBGMの音量は大丈夫ですか?」「もし苦手なことがあったら、いつでも教えてくださいね」と一声かけるだけでもお客さまの安心につながります。
・引用元:「#2|美容サロンが押さえておきたい、障がいの基礎知識」
今回、ご紹介したコミュニケーションの方法は、あくまで一例です。必要な配慮やサポートは、お客さま一人ひとりによって異なります。まずはご本人に希望を聞きながら、無理のない範囲で、柔軟に考えてみること。 サロンの皆さんの「お客さまに安心して過ごしてほしい」という想いこそが、最高の「おもてなし」につながるはずです。
■ データ出典
>> ヘアサロン(美容室・理容室)における障がいのある方の利用実態調査
■ 調査期間
2025年7月25日(金)~31日(木)
■ 調査対象
Webアンケート調査
ミライロのデジタル障害者手帳「ミライロID」を利用している全国/障がいのある方(障がいの特性不問) 442名

田中 公子
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
TANAKA KIMIKO/前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。調査研究員として、「美容センサス」をはじめとする美容サロン利用調査や美容消費の兆しを発信。セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。共著に『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか。
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