
超高齢社会を迎え、「訪問理美容サービス」はますます注目度を増しています。髪を整えることは、単なる身だしなみを超えて、心身にどのような影響を与えるのでしょうか。
ホットペッパービューティーアカデミーでは、最新の利用実態を明らかにするためケアマネジャー(介護支援専門員)さんやご家族の方を対象に「訪問理美容に関する調査2025」を実施しました。
調査からは、利用者が実感している「効果」や、物価高騰下での意外な利用動向など、今後のサービス展開のヒントとなるデータが数多く寄せられました。
文・作表 江頭茉里(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
目次
①満足度9割。利用者の暮らしを支える「特別な時間」に

まず注目したいのが、サービスの認知度と満足度の圧倒的な高さです。ケアマネジャーにおける認知率は94.7%に達しており、担当している要支援・要介護者の62.3%が実際にサービスを利用しています 。

また、さらに印象的なのは、利用者やそのご家族からの深い信頼感です。ケアマネジャーの88.7%、ご家族の89.1%がサービスに対して「満足」と回答しています。
この高い数値は、単に「髪が短くなってスッキリした」といった結果への評価だけではないはずです。外出が困難な方々にとって、プロの手によって髪が整えられていく時間は、日常とは少し違ったとても特別なひとときなのではないでしょうか。
訪問美容は単なる「髪を切る」といったサービス以上のものとして、利用者の日々の暮らしに彩りを与える専門的ケアだと捉えられているのかもしれません。
②「きれい」が引き出す活力。自立心を支える美容の力
先ほどの満足度も示すように、訪問美容が提供するのは、単にカットやカラーという技術だけではありません。施術を受けた後に利用者の心身にとてもポジティブな変化が起こることも調査からわかっています。

サービスを受けた後の具体的な変化として、ご家族の51.7%が「笑顔になる」と回答しました 。さらに「会話が活発になる」、「活力があふれた様子になる」、「鏡を何度も見返す」といったポジティブな変化や効果を実感しています。
こうした心の潤いは、日常生活の質にも大きく影響を与えるものではないでしょうか。訪問美容での施術を通じて「きれいになる」という体験が、利用者の内にある活力を引き出し、前向きな生活を支える一助となっていると言えそうです。
③物価高でも利用頻度は「特に変化なし」が多数
昨今の物価高騰はあらゆる家庭の家計を圧迫していますが、訪問美容への支出についてはどう考えられているのでしょうか。

物価高の影響を受けても、約7割のご家族が利用頻度について「特に変化はない」と答えています。驚くべきことに、在宅利用者においてはむしろ「利用頻度を増やした、または利用を始めた」層が24.9%にのぼり 、利用を控える動き(6.6%)を大きく上回りました。
節約などへの意識が高まる中で、他のレジャーや嗜好品にかけるお金が削られても、訪問美容は「心の健康や清潔を保つために必要な支出」とみなされていることがわかります。
なお金額の面では、1回あたりの平均カット料金は施設で2,000円、在宅で2,712円となっており、昨年と比較して微減傾向にあります 。
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④事業者選定の決め手は「丁寧な対応」と「時間の融通」
ご家族やケアマネジャーが訪問美容を委託する事業者を選ぶ基準についても調査しました。

在宅利用者のご家族が事業者を決める際、最も重視したのは「要介護者・要支援者に対して丁寧に対応してくれそう(52.5%)」という点でした。これは何よりもまず、「大切な家族に優しく丁寧に接してほしい」という、ご家族として当然の願いの表れと言えます。
またそれに加え、この「丁寧さ」が求められる背景には、施術場所の実態にも関係がありそうです。施設利用者の54.1%が「多目的ルームやホール」などの共有スペースで施術を受けるのに対し、在宅利用者の場合は77.9%と約8割近くが「リビングなどスペースのある部屋」を利用しています。スタッフを自分たちのプライベートな生活空間に招き入れるサービスだからこそ、技術以上に「この人なら安心してお任せできる」という信頼関係や丁寧な物腰が、選定の条件となっているようです。
また丁寧な対応に次いで重視されているのが、「時間の融通がききそう(51.9%)」という点です。利用者の体調の変化や介護スケジュールの都合に合わせて動いてくれる柔軟な対応力も、大きな決め手となっています。ご本人やご家族の生活環境に深く寄り添う「きめ細かなホスピタリティ」こそが、訪問美容において信頼を勝ち取る鍵といえるでしょう。
⑤「お客さまの気持ちに寄り添う」ことが店販戦略のカギ
最後に、私たちのライフスタイルの変化が、訪問美容の現場にどのような「新しい当たり前」をもたらしつつあるかを見ていきましょう。

これまで、支払いの方法としては「現金」が主流でした。それ自体は2025年においても変化はありません。しかし、街中のさまざまなサービスでは「キャッシュレス決済」の利用が進んでいます。
その波は訪問美容の利用者についても例外ではなく、利用者のニーズは少しずつ変化しています。今後(も)利用したい決済方法として、在宅利用者の3割以上が「クレジットカード」や「コード決済」などのキャッシュレス決済を希望しています。キャッシュレス化への対応は、他社との差別化における強力な武器になりそうです。
また、コロナ禍以降は特に感染症対策への意識も依然として高く、施術スタッフに対して「マスク着用(80.5%)」や「手指消毒(69.2%)」を求める声も根強いです。

高い技術力に加え、こうしたデジタル化への対応や安心・安全の徹底が、訪問美容への信頼を得るためのスタンダードとなっていくでしょう。
■ データ出典
ホットペッパービューティーアカデミー
■調査期間
2025年10月
■調査対象
ケアマネジャー114名 要支援・要介護の方と同居されているご家族1949名

江頭 茉里
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
えがしら まり/2020年株式会社リクルート入社。前職では英語教育関連の会社にて書籍編集に従事。入社後はスタディサプリENGLISHのコンテンツディレクターを経て、2024年10月より現職。日本化粧品検定1級取得。
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