
美容師免許を取得しながらも、「美容師にならない割合」が増加しています。
一方で、一度は辞めた美容師が復職するケースも増加傾向にあるなど、美容業界の人材構造に大きな変化が見られます。
今回はホットペッパービューティーアカデミーの「美容サロン就業実態調査」(2025年)をもとに、今、美容業界の“働き方”に起きている変化と、経営者が注目すべきポイントを読み解きます。
文・作表 田中公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
目次
①資格は取る、でも美容師にならない理由とは?

専門学校への進学者数が伸びている(文部科学省「学校基本調査」=2024年12月)一方で、資格を取得しても現場に進まない人の割合は年々増加しています。
若者に限った傾向とは断定できませんが、「美容師資格は取ったが、美容師にはならない」という選択が広がりつつあることが、調査から読み取れます。
その背景には、キャリアの多様化だけではなく、美容サロンでの入社後の働き方・待遇への不安もあると考えられます。
新人が美容師として働き続けるには、“入り口のサポート”がますます重要になっています。
②入社後3年以内に学びたかったのは「経営知識」

美容サロン従事者に、学校を卒業して働き始めた初期(入社後3年目まで)に「学んでおきたかったこと」を聞くと、1位「技術」(49.3%)、2位「接客スキル」(36.2%)に続き、3位「経営に関する知識」(27.8%)や6位「売上や数字に対する意識」(25.4%)が上位にランクインし、「技術」だけでなく、「経営知識」や「売上・数字への意識」なども上位に挙がりました。
美容業界では、人材マネジメントやマーケティング、財務管理などの“経営スキル”が求められる場面が多い一方で、それらを体系的に学ぶ機会が少ないのが実情です。
そのため、「新人のうちから経営に関する知識を身につけておきたかった」と感じている人が多いと考えられます。
③離職率は低下傾向。働き方改革が功を奏す?

美容師の離職率は、2021年以降48%前後で推移していましたが、2025年には45.7%と過去5年で最も低い水準となりました。
福利厚生の見直しや、早期スタイリストデビュー制度、“若手でも稼げるキャリア設計”の普及など、サロン側の改革が数字に表れてきたとも考えられます。
若手が「美容師を続けられる」と思える環境づくりの成果が、数字に表れ始めているのかもしれません。
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