
厚生労働省の調査では、障がいのある方の人口は増加傾向にあり、2022年時点で人口の約1割と発表されています。一方で、美容サロンにおいて障がいのあるお客さまが「不便」や「不安」を感じているケースもあります。お客さま一人ひとりが安心して利用できるために、今、美容サロンでは何ができるでしょうか。
ホットペッパービューティーアカデミーは、「誰もが美容を楽しめるサロンづくり」のヒントを提供したいという思いのもと、「障がいがあるお客さまへの接客」の情報発信を開始しました。今回は2025年11月に発表した「ヘアサロン(美容室・理容室)における障がいのある方の利用実態調査」から、実際のサロン利用における現状やニーズを明らかにしています。
文・作表 田中公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
目次
①障がいがある方は「約10人に1人」

厚生労働省の調査によると、国内で障がいがある方は 1164万6000人(2022年) と推計され、人口の約9.3%、つまり約10人に1人の割合になります。4年ごとの調査では、2010年から増加傾向にあり、特に前回の2016年からは24.3%増と大きく伸びています。
特に増加が顕著なのは精神障がいで、56.7%増(2016年→2022年)です。サロンに来られる「お客さまの特性」もさまざまであり、障がいのある方の来店は特別なことではなく、すでに多くのサロンにとって接客の機会があることがうかがえます。
②障がいの特性はさまざま
「障がいがある方」と聞くと、どんな特性を持つ方をイメージしますか? 車椅子や白杖などを使用されている方をイメージすることもあるかもしれません。一方、見た目には分かりにくい障がいもあります。障がいは一人ひとり違い、さまざまな特性があります。
ここでは代表的な7つの特性をご紹介します。



次に、全国の障がいがある方442人の美容室利用に関する実態調査をご紹介していきます。
③障がいがある方が、サロンで多い「困りごと」は?

ヘアサロン利用時に困ったこととして最も多かったのは、「長時間同じ姿勢でいるのがつらい」(28.7%)、次いで 「予約が取りづらい」(25.3%)。また、「コミュニケーションがうまく取れなかった」(24.0%)という声も目立ちます。
ここで注目したいのは、回答者全体で見ると「バリアフリーでない」(14.5%)という物理的な環境整備の面よりも、姿勢の維持やコミュニケーションなど「ソフト面(接客や仕組み)」での課題が大きいことがわかります。
※ただし、肢体不自由のある方のみを抽出(n=108)すると、「バリアフリーでない」(35.2%)が突出して高く、障がいの特性により物理的な環境が利用の障壁になっているケースもあります。