【ヘアサロン六法】5.合理的配慮の義務化 -美容室経営者の法律相談

特集・インタビュー
【ヘアサロン六法】5.合理的配慮の義務化 -美容室経営者の法律相談

この4月から合理的配慮の提供が義務化されました。事業者である美容室やエステティックサロンも、この義務を果たすことが求められます。

美容専門学校で「美容師法」の講義を担当している弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!

「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

こんにちは!弁護士の松本隆です。

久しぶりの更新です。今回もお役立ち情報を発信していきます!

第5回は「合理的配慮の義務化」です。

映画館でのニュース

最近のニュースで、映画館にいらした車椅子の方へのスタッフの対応が波紋を呼びました。

内容は以下のとおり。

・車椅子の方が映画館の一番大きなスクリーンでのみ上映している映画を観たいと思って来館。

・しかし、一番大きなスクリーンの部屋には車椅子席がなく、座席までに階段が4段あり、スタッフのサポートなしでは観られなかった。

・車椅子の方がスタッフにサポートをお願いしたところ、対応はしてくれたものの、次回からは他のスクリーンで観たほうがお互いのためである等と発言。

・車椅子の方は過去にこの映画館で3回サポートを受けたことがあるが、このように言われたことはなかった。

顛末が気になりますね。

それでは「合理的配慮」について見ていきましょう。

合理的配慮の義務化の内容

令和6年4月1日から「障害者差別解消法」が改正され、事業者による障害のある方への「合理的配慮」の提供が「義務化」されます。

条文には、

障害者差別解消法 第8条2項

事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

とありますが、簡単に言うと、

合理的配慮の義務化(美容室経営者の法律相談)

ということです。

なお、事業者の方にとって「負担が過重でない」ことが条件になっているので、大変なことまではしなくてもいい、ということになります。

「合理的配慮」の具体例は?

⑴ 内閣府のリーフレットによれば、以下のような例が載っています。

例①(車椅子で着席するための椅子の片づけ)

・飲食店で障害者の方から「車椅子のまま着席したい」という要望があった場合の「合理的配慮」としては、机についている備え付けの椅子を片づけて、車椅子のまま着席できるようにするということが挙げられます。

椅子を片づけるくらいだったら「負担が過重でない」と言えますよね。

合理的配慮の義務化(美容室経営者の法律相談)

例②(板書の代わりに撮影を許可)

・セミナーを受講していたが、文字を書くのに時間がかかるため、「ホワイトボードを最後まで書き写せない」という申出があった場合の「合理的配慮」としては、書き写す代わりにデジカメやスマートフォンなどでホワイトボードを撮影できるように許可するということが挙げられます。

撮影できるようにするくらいだったら「負担が過重でない」と言えますよね。

合理的配慮の義務化(美容室経営者の法律相談)

⑵ 「サロンでの合理的配慮」は?

例えば、車椅子のお客様から「車椅子から施術の椅子に移動するのを手伝ってほしい」という要望があった場合、補助を行うことは「合理的配慮」にあたると考えられます。

(ただ、体を支えて移動することまで手伝ってしまうと怪我をしたときに責任問題になってしまうので、どこまで補助をするかが難しいところですね)

これに対して、「車椅子のまま施術を受けたい」という要望があっても、サロンの施術の椅子が固定で片付けることができず、なおかつ、車椅子のまま施術するスペースを確保できないということであれば、車椅子のまま施術をしないことが「合理的な配慮に違反する」とはいえないと考えられます。

合理的配慮の義務化(美容室経営者の法律相談)

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