
トレンドラボのリーダーを務める井高英聖氏(岡山県組合)が社会情勢に伴う生活者心理やファッションの変化を解説
時代の不安定さに寄り添いながらも、個性と感性を解き放つスタイルが今季の主流となるーー。
全国理容生活衛生同業組合連合会(全理連)の中央講師会は2025年9月30日、東京・代々木の全理連ビルで令和7年度秋期研修会を開催。トレンドラボ部会のメンバーが、2025秋冬のトレンドを発表した。
2025.09.30更新(2025.09.30公開)
従来の女性らしさにとらわれない「新フェミニティー」
井高英聖氏(岡山県組合、ヘアパーク クレイヴァ)をリーダーに、社会情勢やSNS、ファッションの動向を分析して流行を探るトレンドラボ。2025秋冬のトレンドとして注目するのは、“主張するエレガンス”と“優しく包むような温もり”を併せ持つ「エレガンス&ロマンティック×カントリー」だ。
「クラシカルな美しさに現代的な感性を加えた『新フェミニティー』が台頭し、強さと柔らかさが共存する装いがトレンドの中心になる」と予測した。
エレガンス&ロマンティックの流れでは、ヴィクトリアン調のレースやフリル、ドレープが注目され、貴族的なディテールが現代的に再解釈される。
カントリーの要素については、ヴィンテージ花柄やトレンドのチェック柄、フォークロア調の刺繍やフリンジなど、自然や郷愁を感じさせるモチーフが豊富に登場している。乗馬や田園風景から着想を得たルックも多く、素朴さと洗練が共存するスタイルが提案されているという。
この秋冬は、「新フェミニティー」という言葉が象徴するように、従来の女性らしさにとらわれない自由な表現が広がり、エレガントな装いにカントリーの温もりを添えて、自分らしさを大胆に、そして優しく表現するシーズンになるとの予測を示した。

変革と癒やしがカラーの二軸
こうしたファッションの流行について、「リラックス × 構築的シルエット」「涼感と軽やかさの素材」「カラーの二軸」「レトロモチーフの現代的再解釈」「メンズの “Liquid Tailoring”」の5つを挙げた。
①リラックス × 構築的シルエット
オーバーサイズシャツやワイドパンツ、デニムチュニックなどの快適アイテムに、スカルプチュラルトップスやハイスリットスカートなど構築的な要素を組み合わせ、「日常の快適さ」と「モード感」を両立。
②涼感と軽やかさの素材
リネン混、軽量コットン、オーガンジー、メッシュなど通気性重視素材が注目。レースやクロシェなど手仕事感のある素材も再評価され、サステナブルかつ情緒的価値を持つ。
③カラーの二軸
ビビッドカラー(Transformative Teal, Electric Fuchsia)は変革・エネルギーを象徴。クールパステル(Blue Aura, Jelly Mint)は癒やし・清涼感を表現。モノトーンやニュートラルに差し色を一点投入するコーデが主流。
④レトロモチーフの現代的再解釈
ポルカドット、ゼブラ柄、ボヘミアン花柄など懐かしさある柄を、オーバーサイズや非対称カットで現代的にアレンジ。ストリート×ラグジュアリーのミックスが目立つ。
⑤メンズの “Liquid Tailoring”
リキッドテーラリングは、まるで液体のように滑らかにフィットするような仕立てのこと。硬さを脱ぎ、ドレープ感やストレッチ性のある柔らかいスーツが主流。ジャケットとパンツのセットアップをサンダルやスニーカーで軽快に着こなすスタイルが台頭する。
世相を映し出す “静かなる贅沢” の存在感
2025年のファッショントレンドは、社会情勢の影響を色濃く反映しているという。
経済不安やインフレによる節約志向の高まりから、「静かなる贅沢(クワイエットラグジュアリー)」やミニマルで実用的なスタイル、ニュートラルカラーが支持される傾向にある。
一方、社会的緊張や不安に対抗する形で、1980〜2000年代のレトロリバイバルやY2Kスタイルが再燃し、特にGen Z(Z世代)ではセカンドハンドやリセール市場が拡大している。環境意識の高まりから、花や動物モチーフ、アーストーンカラー、フェイクファーなど自然志向のデザインが注目され、エシカル素材が採用されている。
またSNSでは、短期間で消費されるマイクロトレンドやニッチな美学(indie sleazeなど)が急速に拡散し、個性重視の装いが台頭。さらに、ストレス解消や癒やしを求めるムードから、coastal bohoのようなリラックス感とロマンチックさを兼ね備えたスタイルも人気となり、注目を集めている。
2026春夏は実用性×感情価値
さらに、2026春夏トレンドについても言及。「実用性と感情価値の両立」がキーワードになると発表した。
トレンドラボでは、快適さ、自己表現、ストーリー性を意識し、色、形、素材のすべてにこの傾向が反映されると見ている。
取材・文・撮影/大徳明子

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