
美容室経営者としての経験をいかし、アプリ事業を展開する柴田章さん
美容師が美容に集中できる環境をつくりたい──。
神戸市元町の美容室CAMERA(カーメラ)の柴田章代表が開発した回数券アプリ「MATAKUL(マタクル)」は、単なるデジタルツールではない。個人事業主でも使いやすい設計で、美容室の収益構造そのものを変える挑戦といえる。その背景とビジョンを聞いた。
“小さなビジネス”に特化した回数券アプリ
マタクルは回数券機能に特化したWebアプリ。
「先行の回数券アプリは大手が開発し、ユーザーも大手がほとんどなので、中小企業には不要な機能も多い。そこでマタクルは“全部入り”ではなく、必要なものだけに絞りました」と柴田代表は語る。
機能をシュリンクしたことで開発費も抑えられ、利用費も値ごろに。とことん“小さなビジネス”に寄り添ったサービスとなっている。

さまざまなリピートビジネスに波及する美容師の現場目線
マタクルのユーザーが確実に広がっているのは、美容室経営者としての経験に基づく設計にある。「美容師は髪を切っているのが一番幸せ。管理や入力作業はできるだけ減らしたい」(柴田代表)。
紙の回数券をデジタル化し、顧客と店舗画面を連動させることで、業務の手間を削減。
さらに、他のアプリや予約サイトと違ってオープンプラットフォームでないことも特徴のひとつ。顧客が利用する店舗やサービスの電話番号と紐つけられ、顧客に他店舗の情報が“営業されない”仕組みもユーザーに好評とのこと。

徹底した現場目線の設計で、美容サロンや鍼灸院といった店舗型の事業者だけでなく、語学講師やコーチングなどの個人でビジネスを展開するユーザーに広がった。2026年2月現在、約1000の店舗・サービスが登録。エンドユーザーは1万5000人にのぼる。
回数券が変える美容室と顧客の関係性
柴田代表自身のサロンでは、ヘッドスパとトリートメントを組み合わせた“28日周期ヘアエステ”を回数券化した。
「ケアを“ついで”から“主役”に変えたかった」と柴田代表。結果、年間売上は倍以上に伸びたという。
「毎月ヘアエステに通う習慣ができれば、カットやカラーはその中に組み込める。高リピート・高単価の構造に変えられる」(柴田代表)。回数券は単なる前受金ではなく、来店習慣を設計する装置だと位置づける。
日本の回数券文化を世界へ
「到達地点は“良いサロンの継続化”。技術や接客に集中できる環境をつくることで、美容師と顧客を幸せにしたい」。柴田氏はそう強調する。
2026年1月には回数券推進協会の設立。法制度や会計処理を学び、安全に販売できる環境を整える。さらにシンガポールをはじめ海外展開も進行中だ。
「回数券は日本と台湾に根づく文化。信頼の証として、アジアに広げたい」(柴田代表)。蓄積するデータを将来的にコンサルティングやAI活用へ展開する構想も描く。
柴田さんの挑戦を後押ししてきたのが美容家電メーカーのKINUJO(キヌージョ)だ。「無駄を削ぎ落とし顧客の使いやすさを追求したプロダクト思想に共感している」と柴田代表。
約8~9年前の出会い以来、展示会での“サポート美容師”としての活動や協賛を通じて関係を深めてきた。

「浜田智章社長を中心にしたグローバルなビジネス展開にも共感して刺激をもらっています」と語る柴田代表。ビジョンを共鳴し合い、中小サロンの挑戦を支えるパートナーとして歩みをともにしている。

柴田 章
pepelabo/CAMERA代表
しばた・あきら/神戸市出身。モッズヘアに入社し、21歳でスタイリストデビュー。イタリア留学を経て神戸でサロン立ち上げに参画。30歳でCAMERA(カーメラ)開業。40歳でペペラボ設立。現場課題から回数券アプリ「MATAKUL(マタクル)」を開発し、国内外へ展開している。
取材・文/七島周子

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