
弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。
第68回は残業代の請求(〇〇の庭事件 ※一部伏せます)を取り上げます。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

こんにちは!弁護士の松本隆です。
この連載では「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りしています。
従業員の方から残業代の請求をされたことはありますか?
え?うちはされたことがないから大丈夫?
…本当に大丈夫かはこれを読んでからにしてください。
相談事例
相談者:Yサロンの経営者A
先日、従業員Xが「2000時間近く残業した」と言って220万円を請求してきたんです。
しかも、裁判になったら「付加金」で残業代と同じ額の220万円をプラスして合計440万円になると言っています。
多少は残業していたこともあるかもしれませんが、そんなに払わないといけないんですか?

今回扱う「〇〇の庭事件」、なんと請求された残業代は、220万円!
しかも「付加金」という倍返し制度まで絡んできて、経営者の顔が青ざめる案件に発展したのです…
どんな事件?
事案
原告:「〇〇の庭」という名のオシャレな美容室Yの店長・美容師X
XはYサロンに解雇されたので、「解雇は無効だ!残業代払え!慰謝料も払え!」と言って裁判を起こした。
注目ポイントは、Xが主張する時間外労働の合計が「1892時間50分(深夜含む)」という点。
これに法定割増賃金を乗せて「222万1905円」の未払賃金と同じ額の付加金(合わせて440万円超)まで求めたのです。
「〇〇の庭事件(編集注:一部伏せました)」(東京地判平成21年4月16日・労働判例985号42頁)
Yサロンは「自主練でしょ?雑談でしょ?休憩とってたでしょ?」と反論。
一体どこまでが「労働時間」だったのかが、激しく争われたのです。
当事者の主張
美容師X(原告)の主張
・私は開店30分前である11時30分に出社していた。遅れると「精勤手当」がカットされていた。だから開店前の30分は労働時間。
・閉店後も事務作業・レジ締め・終礼・掃除等の仕事があった。
・休憩は30分しかとれてなかった!

Yサロン(被告)の主張
・開店前の時間は「自由参加の朝練」だった、雑談や朝食の時間もあった。
・閉店後にXはおしゃべりしてからレジ締めをしていることもあった。
・サロンは夕方から客が入るため、日中は暇な時間帯が多いから、休憩は十分に取れていた。

