調査結果と心理学の法則からさぐる「美容室店販の実態と課題」

プロダクト・技術
調査結果と心理学の法則からさぐる「美容室店販の実態と課題」

「店販が重要なのはわかっているけれど実際は売れない」と思っている美容師さん、美容室経営者の方は少なくないのではないでしょうか。

ホットペッパービューティーアカデミー(運営:株式会社リクルートライフスタイル)が全国の15~69歳の男女それぞれ6600人を対象に実施した「美容センサス2019年上期 美容室・理容室編」から、美容室店販の実態と課題を探ります。

美容室で年間いくら買っている?

美容室で商品を購入した人に、過去1年間ではいくらになるのか聞いた結果、平均で女性が9947円、男性が8660円でした。

美容室の店販売上高(女性)

女性は、1万円超の購入者が25.1%。買うまでのハードルは高いものの、いざ買うとなれば4人に1人もの女性が1万円以上使っています

「シャンプー&コンディショナーを美容室で定期的に買う」「ドライヤーのような高額商品を買う」などの購買行動がありそうです。

以下、3001~5000円(21.9%)、2001円~3000円(18.0%)、5001~1万円(17.6%)と続きます。

美容室の店販売上高(男性)

男性は、3001~5000円が最も多く23.0%で、5001~1万円が20.4%、1万円超が19.1%と続きます。

一方、500円以下はわずか1.5%。女性も同じく2.0%に過ぎません。

500円以下での店販商品の開拓に/関連記事人気のハンドクリームBEST10

店販商品を買うきっかけは?

美容室の店販購入のきっかけ(女性)

美容室の店販購入のきっかけ(男性)

店販商品を購入したきっかけは、男女とも「サロンのスタッフに勧められたから」がトップで約6割を占めます。

「施術中の使用感がよかったから」も理由にあげる人が多く、女性で2位(32.3%)、男性で3位(23.9%)。

「サロンのスタッフの商品説明が丁寧・分かりやすかったから」は、女性で3位(27.7%)、男性で2位(34.7%)。

「自分の状態に合う商品だと思ったから」は男女とも4位でそれぞれ2割弱でした。

店販の基本とされる

・スタッフが勧める

・施術中に使って、商品の良さを実感してもらう

・その人に必要な製品であることが伝わるようカウンセリングする

などの取り組みは、やはり効果的であることが実証された形です。

店販商品を買う人の割合は?

ここまでは買った人を対象に、店販商品の購入額やきっかけを見てきました。

そもそも店販商品を買うという人はどのくらいいるのでしょうか?

回答選択肢は4つ。本当はなぜそうなったかの理由分析が必要ですが、大きくは次のようになります。

  • 「ここ1年間で購入した」←ロイヤルカスタマー
  • 「ここ1年間の購入はないが、過去に購入したことがある」←期待値の高い顧客
  • 「購入したことはないが、興味がある」←期待値の高い潜在顧客
  • 「購入したことはないし、興味もない」←難易度の高い潜在顧客

美容室の店販の購入経験率(女性)

美容室の店販の購入経験率(男性)

過去1年間に店販商品を購入した女性は14.3%、男性は20.0%。今までに一度でも購入したことがあるという経験者は、女性34.3%、男性35.4%。

男性の方が店販への関心が高いという結果となりました。意外に思う方も少なくないのではないでしょうか?

この調査では美容室自体の利用率についても聞いているのですが、美容室の利用者は女性が86.0%、男性は34.9%(過去1年間)。

女性はほとんどの人が美容室を利用しますが、男性で床屋ではなく美容室を選ぶ人は美容への関心が高い傾向にあることも影響しているのかもしれませんね。

関連記事ポテンシャルの高いメンズ市場(リンク先記事の見出し4)

美容室における店販商品のアピールは?

男女とも、美容室で一度でも店販商品を購入したことがある人は35%前後でした。

高い数字ではありませんが、そもそも店販商品はお客さまに十分アピールされているのでしょうか?

美容室の店販購入のきっかけ(女性)

美容室の店販購入のきっかけ(男性)

なんと、スタッフから紹介されたことがある人は男女とも4割以下。

勧められた人の7割が購入しているにもかかわらず、半数以上の人は店販を紹介されていないという機会ロスが生じていることが見て取れます。

店販購入者では「施術中の使用感がよかったから」を理由にあげる人が多く、女性で2位(32.3%)、男性で3位(23.9%)でしたが、実際、施術中に使ってもらった人は男女とも3割を切っています。

店販の基本とされる

・スタッフが勧める

・施術中に使って、商品の良さを実感してもらう

・その人に必要な製品であることが伝わるようカウンセリングする

などの取り組みを徹底することで店販の購入率が上がるのではないでしょうか。

また、お店によっては

・施術で使うシャンプーと店販のシャンプーが別

・スタッフが店販商品を使ったことがない

というケースもありますが、自信をもって勧められるように

・施術と店販のシャンプー&トリートメントを同じものにして紹介する

・スタッフ自身が商品の良さを体感する

といいかと思います。

店販にも「ザイアンスの法則」

アメリカの心理学者であるロバート・ザイアンスの提唱した「ザイアンスの法則」(単純接触効果)というものがあります。

人でも物でも接触する機会が多くなればなるほど、好感度が高まるという心理学の法則です。

店販を苦手とする人は「しつこく勧めすぎたら嫌がられるのでは?失客するのでは?」という不安があるのではないでしょうか。

確かに、一度にしつこく勧めすぎるのは逆効果です。そこで、相手の反応を見ながら、接触ポイントを増やすのはどうでしょうか。

例えば

・ウェイティングスペースに店販品・見本を置き、香りやテクスチャーを試せるようにする

・メニューやヘアスタイル写真を入れたファイルに店販のリーフレット(自筆のコメント付き)も加える

・施術で使う際「いい香りですよね。ご自宅用も取り扱っているんです」と簡単に紹介する
⇒関心を示したお客さまには詳しく説明&髪質の悩みなどをカウンセリングする

・鏡の前に商品見本、ミニPOPを置く

・トイレにテスター、ミニPOPを置く

・レジ前に商品やミニPOPを置く

ことで、お客さまと店販商品の接触回数が格段に増えます。

その時は購入につながらなくても、お客さまは無意識のうちに認識するので、2度目、3度目の来店時には「この商品、知っている」という意識になっているため、購入へのハードルがさがります。

もちろん店販は簡単なことではありませんが、美容室経営の安定化につながる大切な取り組みです。

そしてホームケアが充実することでお客さまのキレイをサポートすることになり、結果的にサロン・施術への満足感を高め、顧客の定着につながります

また、初めてのことは心理的なハードルが高いものです。「美容室は髪を切るところ」としか思っていないお客さまも、一度購入するとその体験によって「美容室でモノを買うこともある」と認識が変わります。

ハンドクリームなど小さな物販からでも始めてはいかがでしょうか。

レジ前や鏡の前にも置きやすい『ハンドクリーム』ベスト10

美容室で本当に売れている『夏場の頭皮ケア』ベスト10

頭皮をスッキリさせたいお客さまに『シャンプーブラシ5選』

関連キーワード

注目キーワード

新着記事一覧   トップページ  
Top