AB&Companyがマザーズ上場、市瀬一浩社長が会見「働き方を変え、シェア1%の2600店舗超へ」

経営・業界動向
AB&Companyがマザーズ上場、市瀬一浩社長が会見「働き方を変え、シェア1%の2600店舗超へ」

業務委託サロン最大手の「Agu.」を展開するAB&Companyは、2021年11月19日付で、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場を果たした。

これに伴い、同日11時30分より、東京証券取引所で記者会見を行い、市瀬一浩社長が事業計画と成長可能性を説明した。

「ユニークなビジネスモデル」と「スタイリストファースト」

事業者は数多あれど、上場企業は少ない美容業界。この日、AB&Companyは美容室では6社目となる上場を果たした。

金融記者やアナリストを前に、市瀬社長が繰り返し口にしたのが、直営とフランチャイズを両輪で回しつつ店舗内装を内製化した「ユニークなビジネスモデル」と、長時間労働・低賃金・高離職率を是正する「スタイリストファースト」という企業理念だった。

AB&Companyの上場記者会見に出席した役員陣(美容室Aguを展開)
(写真右から)会見に臨む市瀬一浩社長、永島光取締役CFO経営管理本部長、駒田道洋執行役員経営企画部予算統括

2023年10月末に950~1000店舗へ

2021年9月末時点でのAgu.を中心とした店舗数は、直営が242店舗、FCが413店舗の計655店舗。

「毎年140~150店舗を出店しているが、今後も5~10上積みで出店していく」といい、中期経営計画のゴールである2023年10月末には950〜1000店舗を目指す。

オーバーストアと言われる美容業界でスピード出店を続けることになるが、直営とフランチャイズを両輪で回しつつ店舗内装を内製化した「ユニークなビジネスモデル」のため、スピーディーな成長が可能というのが同社の考え。

「国内の美容室約26万店の1%に当たる2600店までは順調に伸ばしていけると考えている」(市瀬社長)。

強みは「顧客獲得力」「スタイリスト獲得力」「出店力」

また市瀬社長は、自社の強みとして「顧客獲得力」「スタイリスト獲得力」「出店力」を挙げた。

■ 顧客獲得力
・カジュアルな価格で質の高いサービス提供
・WEB特化型の集客チャネル

カット+カラーの価格を例に取ると、競合店が7480円なのに対し、Agu.は4500円。この3000円の差分が顧客を獲得する上で大きな強みになる。

また、予約はWEBが中心で、このうち80%がホットペッパービューティー経由。店舗に集客力があるため、経験の浅いスタイリストでも売上を立てやすい。

■ スタイリスト獲得力
・業務委託モデル
・スタイリストへのサポート体制

厚労省調査によると一般的な理美容室(正社員モデル)が年収311万円なのに対し、Agu.の業務委託モデルは年間報酬378万円と2割強多い。

また、シフトが柔軟で時短でも働きやすいため、従来は復職が難しかったママさん美容師など、多様な働き方の受け皿になり得る。

■ 出店力
・独自のフランチャイズモデル
・グループ会社の建.LABOによる出店サポート

生え抜きスタイリストをFCオーナとして起用するため離反リスクが少なく、内製化しているため内装コストを安価に抑えられる。

人手不足が慢性化している美容業界にあって、スタイリストの採用難が出店のネックになることも多いが、「スタイリストファースト」を企業理念に、平均よりも高い報酬を出し、柔軟な働き方ができる環境を整えているため、採用も順調だ。

すでに3000人を超えるスタイリストが勤務しているが、今後も年間500~600人のペースで採用する計画を立てている。

中期経営計画(2023年10月末時点の目標)

■ 店舗数 950程度

■ 売上収益成長率 年平均14~16%台

■ 営業利益率 17~19%台

■ 調整後EBITDA 20~22%台

■ 設備投資額 毎期3億~4億円程度

「美容業界にしっかり恩返しをしていく」

上場を目指すため、2018年3月に投資ファンドのCLSA Capital Partnersと資本提携をしたAB&Companyだが、創業から一貫して、美容師出身の市瀬氏が代表を務めている。

会見の冒頭、市瀬社長は「これから先もしっかり事業を成長させていくと同時に、社会貢献を行い、美容業界にしっかり恩返しをしていく」と口火を切ると、長時間労働・低賃金・高離職率を是正してスタイリストの新たなキャリアデザインを創造し、お客さまの幸せにつなげることを目指す企業であることを強調。

AB&Companyの上場記者会見で説明する市瀬一浩社長(美容室Aguを展開)
「魅力のある業界にしていきたい」(市瀬社長)

質疑応答で、上場によって美容師に何を示したいかを問われると「こんな働き方があり、低賃金に悩まされず、やりがいのある環境で仕事ができることを見せたい。47都道府県のいろいろなところに出店することで、これを認知してもらえるよう尽力したい」と話した。

また、「働き手をどんどん増やすことが私の職責。(新たに美容師を志す人が)入ってきてもらえるような魅力のある業界にしていきたい」と業界の未来への抱負を語った。

なお、AB&Companyの株価は始値1400円。高値は1548円で公募価格の1490円をいっとき上回ったものの終値は1477円だった。会見では始値についての指摘も出たが、「しっかりと真摯に受け止め、これまで通り、店舗をつくり、人材をしっかり育てて尽力していく」と実直に取り組む姿勢を示した。

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