【ヘアサロン六法】9.名誉毀損(民事事件) -美容室経営者の法律相談

特集・インタビュー
【ヘアサロン六法】9.名誉毀損(民事事件) -美容室経営者の法律相談

弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。第9回は「名誉毀損(民事事件)」についてです。

美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!

「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

こんにちは!弁護士の松本隆です。

第9回は「名誉毀損ってどういうときになるの?パート2」です。

今回は「民事事件」の名誉毀損です。

“ヘアサロン経営者向けにわかりやすく”をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りします。

民事事件の名誉毀損

前回の刑事事件の名誉毀損罪とは違って、民事事件では、精神的苦痛を受けた分のお金、すなわち、慰謝料請求(損害賠償請求)の話になります。

今回は、掲示板やSNSに名誉毀損の書き込みがされた場合を前提に説明します。

民事事件で「名誉毀損」として慰謝料請求をするための条件(請求原因)は

① 書き込みをした人が自分の権利・利益を侵害したこと
(=ⓐ公然とⓑ事実を示してⓒ名誉を下げること)

② 書き込みをした人に故意か過失があること

③ 損害額

④ ①があったから③が発生したといえること(因果関係)

です。

例えば、SNSに、不特定多数の人が見られる状況で「●●というヘアサロンの店長のAさんのカットは雑な上にひどい」と書き込んだ場合、

①については、前回の刑事事件の場合とほとんど一緒ですが、ⓐSNSは不特定多数が見られるので公然といえ、ⓑ「Aさんのカットは雑な上にひどい」という事実を示しており、ⓒ「ひどいパーマをした」ということであればAさんの名誉が下がることは明らかですので、満たします。

②については、わざと書いている以上は故意があるといえます。

③については、この書き込みで精神的苦痛が発生したとすれば、それが損害額になります。ここ最近は慰謝料の金額は増加傾向ですが、弁護士費用との兼ね合いでマイナスにならないかはよく検討した方がいいと思います。なお、「サロンの売上が減少した場合」に、「今回の書き込みによって売上が減少したんだ!」と証明するのは難しいことが多いです。

④については、大抵は、①があったから③が発生したといえるので、そこまで問題にならないでしょう。

民事事件の名誉毀損(美容室経営者の法律相談)

誰の書き込みかを特定できる!?

Ⅹ(旧Twitter)などのような匿名で利用ができるSNSの場合、ユーザーが本名ではない人が多いため、誰の書き込みかわからないことが多いです。

しかし、法的な手段によれば誰の書き込みかは特定可能です。

特に、令和4年10月のプロバイダ責任法改正により、「発信者情報開示命令申立て」という手続ができたため、従来の手続よりも特定するための時間や手間が減りました。

(これまで「2回」の手続(仮処分+裁判)が必要だったのが「1回」の手続(非訟)で済むようになりました)

取得できる情報は、例えば、
・IPアドレス
・発信者の氏名・住所
・電話番号
・メールアドレス
・タイムスタンプ

などです。

これらの情報をもとに、次は、慰謝料請求(損害賠償請求)の裁判をしていくことになります。

ただ、これらは専門的な手続なので、弁護士に依頼しなければ難しく、弁護士費用がかかってしまうのが難点です。

依頼するときは、弁護士さんとよく相談して赤字にならないように見通しを立てて下さいね。

民事事件の名誉毀損(美容室経営者の法律相談)

ひどい書き込みをされてしまった方へ

誰かがわからなくても特定できる場合があるので、書き込みを見つけ次第、「弁護士に早めに相談する」のが重要です。

また、放置していれば被害は拡大する可能性がありますが、発信者がわかれば新たな被害が生まれなくなる可能性もあります。

これから書き込みをする方へ

今回は民事事件の名誉毀損をご紹介しました。

「書き込みさえしなければ何も起きなかったのに・・・」と感じることが多くあります。

個人的な見解ですが、どうしても頭に来てしまったとき、言い返したいときに「SNSで書き込みをしよう!」とお考えの方は、深呼吸をする、書き込みを読んだ人のことを考える、友人や知人に愚痴を聞いてもらう等をしてみて、「それでもどうしても書きたいのか」を考えてみましょう。

それではまた!

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

松本 隆

弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー

早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。

横浜二幸法律事務所
▽公式サイト=http://y-niko.jp/
▽TEL=045-651-5115

監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士) 編集/大徳明子 撮影/幡司誠

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